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4 やっぱりここでも人助け
しおりを挟むジュウジュウと肉の焦げる香ばしい匂いが森に漂い、私は呪文を唱える。
「ロケヌヨソクド、ろけぬよそくど! 毒よ、速やかに消滅したまえ! エマタシー!」
「うーーん、良い具合に毒素が抜けて、本来のお肉のお味を引き立てるのはぁーーこの塩コショウよ! これかければ、だいたい美味しい~~🎵」
――ん? なにか視線を感じる。斜め45度あたりから放たれる熱い視線は?
恐る恐るその角度を確認すると、複数の目がこちらを見つめていた。
「ひゃぁーー!! なんですか? あなた方は! お金なんて持ってないですよ」
生い茂る草むらからガサゴソと出てきた男性達の服装は私の服よりもよっぽど上等だった。
――山賊じゃないのか。彼らの騎士服の生地は光沢があって、よっぽど私よりお金をもっていそうだわ。皆様美形でイノシシを食い入るように見ているわねぇーー。
「あのぉ、良かったら食べますか? ちょうどこんがり焼けましたし、大きいから私一人では食べきれませんし・・・・・・」
「いや、私達は魔獣の毒には耐性がないから食べられないよ」
「あぁ、毒ならないです。私が抜きましたから。これは普通のイノシシと同じですよ。多分、それより美味しいかも。臭みも呪文でとったし」
「は? 呪文でとった? 貴女は何者だ?」
「えっと、通りすがりの旅の者の散歩にございます」
「旅? 散歩? どっちなんだ? 女の子がこんな夜中に森を散歩するわけがないだろう?」
「えっと、はい、でしたら旅ってことで。とりあえず、隣国で暮したくて移動中です。まぁ、立ち話もなんなので、お茶いれますからお肉でも食べません?」
私はその時、また見てはいけないものを見てしまった。彼らの酷い怪我だ。魔獣の爪にえぐられた足を引きずり、噛まれた痕まである騎士達。これは新種の同化魔獣の傷だ。
急いで消毒して呪文を唱えないと魔獣化するか死んでしまう。この世界では同化魔獣にやられると死ぬ人間と、その魔獣に適合して同じ魔獣化する者がいた。確率は半々でとても悲しい事態になる。だってさっきまで助け合っていた仲間が魔獣化して人間を襲うのだから。
――ここで助けるとまた困ったことになるのかな・・・・・・でも見殺しにはできないよ。
「すいません。そこの方とこちらのあなた。私のところに来ていただけませんか? 今、治癒してさしあげますから」
「にともがわ よずみるないせーーニトモガワ、ヨズミルナイセーープイプイ」
ポワンと右手に現れた聖水で傷口を清め又唱えた。
「よなるなにうゅじまーーヨナルナ!! はぁーー」
「なんだそのおかしな呪文は?」
一番上等な服を身につけた騎士様が笑った。
「はい、私もそこは改善したいところです。もっと素敵な言葉を言いたい。例えば、んーー、だめです。私の語彙能力の問題のようです。あぁ、残念」
私は頭を抱え込んだのだった。それでも、魔力だけは膨大にあるので難なく治療は完了。つい頭を抱え込みながら呪文を唱えたので、制御を忘れほぼ全力で治癒しちゃったみたい。
傷口をふさいでもとどりになったばかりか持病の皮膚病まで治ったと感激された。もう一人は視力が悪かったのにやたらはっきり見えるとはしゃいでいたし、あとの一人は虫歯まで治ったと涙している。
――ヤバい、やりすぎた・・・・・・
ちらっとあのいい服きたお兄さん(フィリップ殿下)を見れば、眩しい者をみるような眼差しで私を見ていた。こんな目つきは、初めてでどうしたらいいかわからない。
「さぁ、皆様元気になったところで、イノシシでも食べましょう。皆で食べればより美味しいです」
「あぁ、そうだな。そしたら私もなにか手伝おう。スープでも作ろうか。ほら大鍋もあるんだ」
小さなカバンから大きな鍋が出てきた様子に私は感動した。
「ひやぁーー! これって噂のマジックバックですか? 初めて見たわ! すごーーい!」
「いや、君のほうがなん千倍もすごいけどね」
「あぁ、私のはたいしたことはありません。ただの流れ弾です」
「流れ弾・・・・・・あっはははは。君っておもしろいなぁ。流れ者って言いたかったの? だったら流れないでいいよ。私の国にずっといればいい!」
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