（完結）悪女と聖女様

4 （サミュエル視点）

「なんて、ひどい！　こんなお優しいミシェル様にそのような言葉を･･････。この方はサミュエル様を許して仲良くしてさしあげている聖女様のような心が清らかな方ですよ？」

　グレプ伯爵令嬢はミシェル様の肩に手を置きます。ミシェル様と、公然と私を非難するリーダー格のグレプ伯爵令嬢はとても仲が良さそうでした。

　ミシェル様は、大きな瞳に涙をためました。

「ごめんなさい。このようなところで、バッグのことを持ち出した私が悪かったわ。サミュエル様、ごめんなさい」

「あぁ、とんだ茶番劇ですね。こちらのサミュエル様はバッグなど借りた覚えがないと言っているのに、一方的すぎますね。申し訳ないが、私にはミシェル様は聖女様には見えませんね。努力をしない方は尊敬はできません。王家の家庭教師達がなげいていました。ミシェル様は王太子妃教育の半分もまだ終えられていないとか･･････しかも、その足のリハビリも全くしていないそうですね？ わざと、歩きたくないとしか思えませんよ」

クリス様がそうおっしゃると、ジャスパー様がクリス様をせめました。

「私のミシェルに文句があるなら、この国から出ていけ！　私は、次期国王なのだぞ！」

「「「なんて、ひどい第２王子だろう！」」」　「「「きっと、悪女にそそのかされたのだわ！」」」

　周りの貴族達も、非難の声をあげました。

私は悪女と呼ばれて、クリス様は悪女にそそのかされた愚か者の王子と言われました。ですが、彼は、社交界の評判など気にしないとおっしゃいました。

私と、クリス様はお付き合いをするようになりました。


*:ﾟ+｡.☆.



私達の結婚式は、公爵令嬢と第2王子の結婚式とは思えないほど、ひっそりとしたものになりました。出席してくれる貴族の数が、とても少なかったのです。でも、それで、うわべだけ仲の良いふりをしていた方達と、そうでなかった方達を見分けられたので良かったと思っています。

私の両親はもちろん大喜びでした。田舎で静養している王様も王妃様からもお祝いのお手紙が届きました。

私は一人娘でしたので、クリス様を婿養子むこようしにし、王都を離れて一家で田舎ですが広大な領地に戻りました。
こうしてみると、緑豊かな領地での暮らしの方がとても、楽しいことがわかりました。

クリス様はいろいろな政策を考え、領民のために尽くしました。
私は、領地の娘さん達の為にマナーなどを教えるお教室を開きました。

領民のために学校を建て、教会を綺麗にしゅうぜんしたり、しなければならないことはたくさんありました。
領民とふれあい、おしゃべりをし、笑いあう、そんな生活はとても充実していました。
そうして、いつのまにか、王都をしのぐほどの繁栄をきわめるようになったのです。

「「「「サミュエル様を悪女だと言う王都のうわさなんて、あてにはならないねぇ。あの方が悪女というのなら、領民もかえりみず、王都に行きっぱなしで夜会ざんまいの、ほかのお貴族様方は悪女以下じゃないか！」」」

領民達は口をそろえて、言うのでした。

私は、クリス様との間に子供を3人もうけ、温かい家庭をきずきあげて、とても幸せなのでした。