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私はマライア。プライス商会会長の娘で、私には姉レイチェルと兄エルウッドがいる。それぞれ一歳違いで私達は平民だから、王立貴族学園の隣の平民でも入学が許される国立学園に通っている。
「レイチェル様が登校していらっしゃったわ。綺麗ねぇーー」
私と連れだって校門をくぐるお姉様には必ず賞賛のため息がでる。
お姉様はまだ学生だけれどモデルの仕事もしており、ファッションショーに引っ張りだこの売れっ子だ。金髪碧眼の華やかな美女。
私は銀髪と言いたいところだけれど、ただの白い珍しい髪だった。瞳も薄いグレーで綺麗な瞳と言われたことはない。
「見てよ、マライア様はお婆さんみたいな白髪よ。いつもうつむいて顔を隠して、お姉様とはまるで違うわよね? すらりとしたお姉様に比べて、なにもかも見劣りするから可哀想」
そう、私はお姉様の引き立て役なの。それはこの世に生まれおちて、物心がついた時からの宿命だと思っている。
「気にすることないわ。マライアはマライアよ。とても可愛い私の妹だわ」
お姉様が私の肩を抱き寄せる。頭をよしよしと撫でてくれるのは幼い頃からで、私はお姉様の良い香りを胸いっぱいに吸い込む。
お姉様愛用の薔薇の香水は、上品で華やぐ香りなの。とてもお姉様のイメージに合う。私は優しくて綺麗なお姉様が大好きだから、人から比べられて酷いことを言われても気にしないようにした。
ある日、学園で1番のお金持ちで素敵な容姿だと評判のオウエンズ商会のクレメント様から声をかけられた。オウエンズ商会と言えば王家御用達で、この国では知らない人はいない。
そこの跡継ぎ御曹司に声をかけられ、私は反射的に「お姉様へのお手紙ならお預かりしますよ。ですが伝言は覚えきれないのでお断りしています」と、いつも言い慣れている言葉を言う。
「わたしはレイチェル様ではなくマライア様に声をかけたのですよ。一緒に今度の週末、映画を見に行きませんか? ご存じでしょう? 舞台で催される劇も良いですが、今は大きなスクリーンに映し出される俳優の繊細な演技を堪能する時代です」
確かに今は新しく映画というものができ、ずいぶん娯楽の幅が広がった。観劇より安い値段で楽しめる映画は平民には大人気だった。
「あのぉーー、本当に私を誘っていらっしゃるのでしょうか? お姉様の間違いではなくて?」
「はい、わたしはマライア様とお付き合いしたいと思っています」
私に恋人ができた瞬間だった。
「レイチェル様が登校していらっしゃったわ。綺麗ねぇーー」
私と連れだって校門をくぐるお姉様には必ず賞賛のため息がでる。
お姉様はまだ学生だけれどモデルの仕事もしており、ファッションショーに引っ張りだこの売れっ子だ。金髪碧眼の華やかな美女。
私は銀髪と言いたいところだけれど、ただの白い珍しい髪だった。瞳も薄いグレーで綺麗な瞳と言われたことはない。
「見てよ、マライア様はお婆さんみたいな白髪よ。いつもうつむいて顔を隠して、お姉様とはまるで違うわよね? すらりとしたお姉様に比べて、なにもかも見劣りするから可哀想」
そう、私はお姉様の引き立て役なの。それはこの世に生まれおちて、物心がついた時からの宿命だと思っている。
「気にすることないわ。マライアはマライアよ。とても可愛い私の妹だわ」
お姉様が私の肩を抱き寄せる。頭をよしよしと撫でてくれるのは幼い頃からで、私はお姉様の良い香りを胸いっぱいに吸い込む。
お姉様愛用の薔薇の香水は、上品で華やぐ香りなの。とてもお姉様のイメージに合う。私は優しくて綺麗なお姉様が大好きだから、人から比べられて酷いことを言われても気にしないようにした。
ある日、学園で1番のお金持ちで素敵な容姿だと評判のオウエンズ商会のクレメント様から声をかけられた。オウエンズ商会と言えば王家御用達で、この国では知らない人はいない。
そこの跡継ぎ御曹司に声をかけられ、私は反射的に「お姉様へのお手紙ならお預かりしますよ。ですが伝言は覚えきれないのでお断りしています」と、いつも言い慣れている言葉を言う。
「わたしはレイチェル様ではなくマライア様に声をかけたのですよ。一緒に今度の週末、映画を見に行きませんか? ご存じでしょう? 舞台で催される劇も良いですが、今は大きなスクリーンに映し出される俳優の繊細な演技を堪能する時代です」
確かに今は新しく映画というものができ、ずいぶん娯楽の幅が広がった。観劇より安い値段で楽しめる映画は平民には大人気だった。
「あのぉーー、本当に私を誘っていらっしゃるのでしょうか? お姉様の間違いではなくて?」
「はい、わたしはマライア様とお付き合いしたいと思っています」
私に恋人ができた瞬間だった。
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