7 / 37
7 オリビア、無理に微笑む
しおりを挟む
※嫁いできた頃に少し時間軸が戻ります。オリビア視点です。
୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧
私は、このお屋敷でとても煙たがれているようだ。けれど、どんなに嫌われようと、やるべきことはしなくてはならない。
「パリノ公爵家の土地、不動産、貴重品、美術品、その他の資産が含まれる資産リストと租税記録を持ってきなさい。生産物や領地での契約書も全部よ。それから、請求書の類いもね」
私はサロンで紅茶を嗜みながら、三人の執事に向かって言った。最初は渋っていた執事達も『持ってこないのなら、ベンジャミン家からは一切お金は援助できないわ』と言うと、続々とつけ払いの請求書を持ってきた。なんと、驚くことに、毎日のようにドレスや宝石を買っていたことがわかった。
「これは大変な金額ではありませんか! それに、毎日のように観劇やオペラに行くなんてあり得ませんよ」
(クロエ様にこれほど貢がれていたとは! これほどまでに夢中だったとは思わなかった)
お父様からお金の管理の仕方を、私は幼い頃から学んできた。一介の商人が大富豪になれたのは、お父様の手腕と発想力のおかげだった。加えて、お金の動きを常にみずから管理し、他人任せにしないということだった。私がサロンで帳簿や請求書を綿密にチェックしていると、ハミルトン様が血相を変えていらっしゃった。
「なにを、勝手なことをしている?」
ハミルトン様は、顔を怒りで歪ませていた。
「これから、ベンジャミン家のお金を融通するのです。私がチェックするのは当然だと思います」
「むぅ。生意気だな、女のくせに!」
「女だから、お金の勘定をしてはいけないのですか?」
私は穏やかな口調で、ハミルトン様に尋ねた。
「平民出身だと、これほど品がないのか?貴族の常識も知らないのだな? 女だからというよりは、高貴な生まれの者は、お金の話題はするものじゃない。下品なことなのだ。まして、公爵夫人みずからが、金勘定をするなど恥ずかしいことだと思わないのか?」
「全く、思いません。お金の流れを正確に把握しておくのは生きるためには必要なことですわ」
「ふん。見た目も冴えないうえに、金勘定が得意な下品な女が妻とは! 神様、私がどんな罪を犯したというのです?」
ハミルトン様は天を仰いでいる。私は、憧れの男性に呆れられて、目の前で天を仰がれたの。悲しかったわ。けれど、これにはパリノ公爵家の使用人たちが心から驚いた。もちろん、私の三人の護衛侍女たちも必死で怒りをこらえていた。
「公爵様、なにか悪いものでも召し上がりましたか? 奥様は素晴らしい美貌の女性ですよ」
パリノ家の使用人たちが口々に言い、非難の眼差しでハミルトン様を見る。
「はっ!! なにをバカなことを!この女に魅了の魔法でもかけられたか? あぁ、さては、ベンジャミン家は邪道な魔法を使えるのか? だから、怪しげな発明をいくつも思いつき大富豪になれたのだな。なんて、恐ろしい一族だ。この国では魅了の魔法を使う者は死罪だぞ」
「公爵様! お言葉が過ぎますぞ!」
さすがに、執事たちはハミルトン様をたしなめた。なぜ、パリノ公爵家をたてなおそうとしている私に、そんな言葉が言えるのだろう? 『推し』だった男性にこれほど嫌われるなんて思ってもみなかった。ハミルトン様の心にはクロエ様がいる。泣いたからといって、ハミルトン様の心が手に入るわけではない。
だから、涙が出そうになったけれど、私は無理に微笑んだのだった。
୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧
私は、このお屋敷でとても煙たがれているようだ。けれど、どんなに嫌われようと、やるべきことはしなくてはならない。
「パリノ公爵家の土地、不動産、貴重品、美術品、その他の資産が含まれる資産リストと租税記録を持ってきなさい。生産物や領地での契約書も全部よ。それから、請求書の類いもね」
私はサロンで紅茶を嗜みながら、三人の執事に向かって言った。最初は渋っていた執事達も『持ってこないのなら、ベンジャミン家からは一切お金は援助できないわ』と言うと、続々とつけ払いの請求書を持ってきた。なんと、驚くことに、毎日のようにドレスや宝石を買っていたことがわかった。
「これは大変な金額ではありませんか! それに、毎日のように観劇やオペラに行くなんてあり得ませんよ」
(クロエ様にこれほど貢がれていたとは! これほどまでに夢中だったとは思わなかった)
お父様からお金の管理の仕方を、私は幼い頃から学んできた。一介の商人が大富豪になれたのは、お父様の手腕と発想力のおかげだった。加えて、お金の動きを常にみずから管理し、他人任せにしないということだった。私がサロンで帳簿や請求書を綿密にチェックしていると、ハミルトン様が血相を変えていらっしゃった。
「なにを、勝手なことをしている?」
ハミルトン様は、顔を怒りで歪ませていた。
「これから、ベンジャミン家のお金を融通するのです。私がチェックするのは当然だと思います」
「むぅ。生意気だな、女のくせに!」
「女だから、お金の勘定をしてはいけないのですか?」
私は穏やかな口調で、ハミルトン様に尋ねた。
「平民出身だと、これほど品がないのか?貴族の常識も知らないのだな? 女だからというよりは、高貴な生まれの者は、お金の話題はするものじゃない。下品なことなのだ。まして、公爵夫人みずからが、金勘定をするなど恥ずかしいことだと思わないのか?」
「全く、思いません。お金の流れを正確に把握しておくのは生きるためには必要なことですわ」
「ふん。見た目も冴えないうえに、金勘定が得意な下品な女が妻とは! 神様、私がどんな罪を犯したというのです?」
ハミルトン様は天を仰いでいる。私は、憧れの男性に呆れられて、目の前で天を仰がれたの。悲しかったわ。けれど、これにはパリノ公爵家の使用人たちが心から驚いた。もちろん、私の三人の護衛侍女たちも必死で怒りをこらえていた。
「公爵様、なにか悪いものでも召し上がりましたか? 奥様は素晴らしい美貌の女性ですよ」
パリノ家の使用人たちが口々に言い、非難の眼差しでハミルトン様を見る。
「はっ!! なにをバカなことを!この女に魅了の魔法でもかけられたか? あぁ、さては、ベンジャミン家は邪道な魔法を使えるのか? だから、怪しげな発明をいくつも思いつき大富豪になれたのだな。なんて、恐ろしい一族だ。この国では魅了の魔法を使う者は死罪だぞ」
「公爵様! お言葉が過ぎますぞ!」
さすがに、執事たちはハミルトン様をたしなめた。なぜ、パリノ公爵家をたてなおそうとしている私に、そんな言葉が言えるのだろう? 『推し』だった男性にこれほど嫌われるなんて思ってもみなかった。ハミルトン様の心にはクロエ様がいる。泣いたからといって、ハミルトン様の心が手に入るわけではない。
だから、涙が出そうになったけれど、私は無理に微笑んだのだった。
202
あなたにおすすめの小説
あなたの愛が正しいわ
来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~
夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。
一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。
「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
【完結】あなたのいない世界、うふふ。
やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。
しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。
とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。
===========
感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。
4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。
婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。
だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。
もしかして、婚約破棄⁉
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。
真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。
一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。
侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。
二度目の人生。
リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。
「次は、私がエスターを幸せにする」
自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる