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2 消えた赤ちゃん(妹side)
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マリーはキャメロン伯爵家とデスティニー公爵家のちょうど中間地点にこじんまりとした家を借りてそこで生活することにした。彼女は姉や夫の実家フェリー伯爵家の援助を望まなかったのだ。
「私もデスティニー公爵家で働いてお給金をいただいています。ライアン様も文官でいらっしゃるのだから二人で頑張れば家などすぐに買えますわ。 最初は小さな借家で我慢して、ゆっくりと一緒に幸せな家庭を築いていきましょう」マリーはにっこりとライアンにほほえみかけた。
「うーーん、なぜわざわざ苦労しなければならないのかな? 僕たちは貴族だよ? 親や君の姉を頼って援助をしてもらえば、この倍の家も借りることができるし屋敷すら建ててもらえるはずだよ……」
ライアンはマリーのばかげた結婚生活に関する考えにとまどっていた。
「せっかく一緒になったのですよ。なにもないところから一緒に力を合わせて生活するって素敵だと思いませんか? もちろん子供ができたら援助していただくことがあるかもしれませんが、まずは自分達で頑張りたいです」
「ふん! ローズが言うように癪に障るぐらい優等生のいい子ちゃんだな……胸くそが悪くなる……」
もごもごと独り言をつぶやくライアン。
「え? なにかおっしゃいました? 小さなお声でしたからよく聞き取れませんでした」
輝くような笑顔を浮かべたマリーはライアンが不満な様子で悪態をついたことに全く気がつかない。
「いや、とてもいい考えだと言ったんだよ」
作り笑いを浮かべて言い直したライアンはローズの色っぽい肢体を思い出してクスリと笑った。
(まぁ、いいか。僕が愛しているのはあの女神のようなローズだ。このマリーは仮初めの花嫁さ)
ほどなくしてマリーが妊娠するとローズが頻繁に訪ねてくるようになった。
「マリー、体調は大丈夫? キャメロン家に帰ってきて出産なさいな」
「いいえ、大丈夫ですわ。それほど大げさにしなくとも経過は順調だとお医者様もおっしゃってくださいましたし……」
「ならば、侍女のレティを置いていくからその者になんでも用を言いつけなさいね」
ローズはとてもマリーを甘やかし毎日のように家に来るのである。
(私は幸せだわ。大好きなお姉様に甘えられて……)
思えば幼い頃からローズはマリーをかわいがってくれたのだ。リボンやドレスなどマリーに似合うものを頻繁にプレゼントしてくれた。ローズからもらった紺のリボンやブラウン系のドレスなどはマリーの宝物だった。
「マリーはこのように暗い色が似合うわ。綺麗な黒髪だし瞳もまるで黒曜石のよう……あなたには華やかな色よりも落ち着いた色がいいと思うの」
ローズはともすれば地味すぎる色合いのドレスやアクセサリーをマリーに与えたが、それは結果的には社交界の重鎮ともいえる貴婦人達の好感度を良くした。
流行を追わない紺やブラウン系の露出度が少ないシンプルなドレスやリボンは若い貴族には野暮ったく見えても老貴族や当主達世代には好ましく映るものなのだ。そのせいか公爵家からも気に入られて愛娘の家庭教師を任されているのだから。
妊娠した今もローズは大騒ぎしてマリーを労り世話をやこうとしてくれることにマリーは心から感謝をしていた。
「お姉様、大好きです!」
マリーが言う言葉にローズは目をそらせて顔を赤くする。
(お姉様ったら照れていらっしゃるのね? かわいい! 両親は亡くなってすでにいないけれどお姉様がいてくれて本当に良かった)
出産当日マリーが赤ちゃんを産み落とすと、ローズが泣きながら喜びライアンを肩を抱いてねぎらってくれた。だが、疲労のあまりうとうととそのまま寝入ったマリーがふと目を覚ますと、赤ちゃんはどこにもいなかった。
「私の赤ちゃんはどこ?」
マリーの問いかけに、
「おめでとうございます。とても元気な男のお子様でしたよ。次期キャメロン伯爵様ですね! ローズ様は大変お喜びで早速キャメロン伯爵家に連れ帰りましたよ」
侍女のレティは満面の笑みでそう言った。
「私もデスティニー公爵家で働いてお給金をいただいています。ライアン様も文官でいらっしゃるのだから二人で頑張れば家などすぐに買えますわ。 最初は小さな借家で我慢して、ゆっくりと一緒に幸せな家庭を築いていきましょう」マリーはにっこりとライアンにほほえみかけた。
「うーーん、なぜわざわざ苦労しなければならないのかな? 僕たちは貴族だよ? 親や君の姉を頼って援助をしてもらえば、この倍の家も借りることができるし屋敷すら建ててもらえるはずだよ……」
ライアンはマリーのばかげた結婚生活に関する考えにとまどっていた。
「せっかく一緒になったのですよ。なにもないところから一緒に力を合わせて生活するって素敵だと思いませんか? もちろん子供ができたら援助していただくことがあるかもしれませんが、まずは自分達で頑張りたいです」
「ふん! ローズが言うように癪に障るぐらい優等生のいい子ちゃんだな……胸くそが悪くなる……」
もごもごと独り言をつぶやくライアン。
「え? なにかおっしゃいました? 小さなお声でしたからよく聞き取れませんでした」
輝くような笑顔を浮かべたマリーはライアンが不満な様子で悪態をついたことに全く気がつかない。
「いや、とてもいい考えだと言ったんだよ」
作り笑いを浮かべて言い直したライアンはローズの色っぽい肢体を思い出してクスリと笑った。
(まぁ、いいか。僕が愛しているのはあの女神のようなローズだ。このマリーは仮初めの花嫁さ)
ほどなくしてマリーが妊娠するとローズが頻繁に訪ねてくるようになった。
「マリー、体調は大丈夫? キャメロン家に帰ってきて出産なさいな」
「いいえ、大丈夫ですわ。それほど大げさにしなくとも経過は順調だとお医者様もおっしゃってくださいましたし……」
「ならば、侍女のレティを置いていくからその者になんでも用を言いつけなさいね」
ローズはとてもマリーを甘やかし毎日のように家に来るのである。
(私は幸せだわ。大好きなお姉様に甘えられて……)
思えば幼い頃からローズはマリーをかわいがってくれたのだ。リボンやドレスなどマリーに似合うものを頻繁にプレゼントしてくれた。ローズからもらった紺のリボンやブラウン系のドレスなどはマリーの宝物だった。
「マリーはこのように暗い色が似合うわ。綺麗な黒髪だし瞳もまるで黒曜石のよう……あなたには華やかな色よりも落ち着いた色がいいと思うの」
ローズはともすれば地味すぎる色合いのドレスやアクセサリーをマリーに与えたが、それは結果的には社交界の重鎮ともいえる貴婦人達の好感度を良くした。
流行を追わない紺やブラウン系の露出度が少ないシンプルなドレスやリボンは若い貴族には野暮ったく見えても老貴族や当主達世代には好ましく映るものなのだ。そのせいか公爵家からも気に入られて愛娘の家庭教師を任されているのだから。
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「お姉様、大好きです!」
マリーが言う言葉にローズは目をそらせて顔を赤くする。
(お姉様ったら照れていらっしゃるのね? かわいい! 両親は亡くなってすでにいないけれどお姉様がいてくれて本当に良かった)
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「私の赤ちゃんはどこ?」
マリーの問いかけに、
「おめでとうございます。とても元気な男のお子様でしたよ。次期キャメロン伯爵様ですね! ローズ様は大変お喜びで早速キャメロン伯爵家に連れ帰りましたよ」
侍女のレティは満面の笑みでそう言った。
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