政略結婚の為の婚約破棄など貴方には言えなかった

青空一夏

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ワイアットside

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 私は、3年前までは騎士団長を務めていた。第三王女は私をとても好きだとおっしゃってくださり、身分違いなので始めは躊躇していた。それでも、王が婚約を許してくださり、王女をもらい受けることを承諾した。

 私達はお互いが大好きで、幸せになれると信じていた。ところがだ、王女から突然に貧乏な騎士団長なんて嫌だと言われ大国に嫁ぐと言われた。

 そんな話は初耳だった。これには、なにかわけがあるはずだ。翌日、王宮に行き王に謁見を申し込んだが生憎、不在だった。代わりに王太子が会ってくださった。

「大国に嫁ぐというアレクシス王女様のお話は本当なのですか?贅沢がしたいなどとおっしゃる王女ではないはずなのに・・・・・・貧乏騎士団長など嫌だと言われました」

「そうか・・・・・・やっと、本音を言ったか。妹のアレクシス王女は、少し前から愚痴ばかり言うようになってね。『なぜ、王女の私が貧乏な生活をしなければいけないのかしら?』等としきりにため息をついていた。そこに大国からの嫁入りの打診だ。この国の王は老人だが、ワイアットだけに教えよう。これは機密事項だが、実はアレクシス王女はその息子に嫁ぐのだ。邪魔をすることは、アレクシス王女の幸せを妨害することだ。それと申し訳ないが、貴方は騎士団から退いてもらいたい。退職金は、通常より払うつもりだ。アレクシスは間違いなく贅沢三昧な暮らしができ、若き後継者に愛される幸せな人生を送る。妹は我が儘で贅沢好きだ。とても、嬉しがっているよ。所詮、貧乏貴族が王女を娶るなど無理な話だったのだ」

 冷ややかな侮蔑の感情をぶつけてきた王太子には、返す言葉もなかった。これ以上、なにができる?アレクシス王女の言った言葉は本心だったのだ。それほどに、金が好きか? あの今までの愛に満ちた時間はまやかしだったのか・・・・・・

 女なんて信じられない生き物だ。私は、退職金を貰い新たな人生を歩もう。もう、この国がどうなろうと、アレクシス王女がどうなろうと関係ない。

 私は今まで住んでいた屋敷を売り払い使用人も全て解雇した。王女との甘い時間を思い起こさせるものは、全て排除したかった。

 そして私は、ただ、がむしゃらに金儲けに勤しんだ。金に泣いた私は、金で笑ってやる!
そんな僻み的な思いをバネに・・・・・・いつしか、実業家として成功し金持ちの仲間入りをした。

 そうなると、女は面白いほど寄ってくる。金に群がる女達は人形と同じだ。美しい心のない人形はいつでも取り替えがきく使い捨ての愛玩物だ。

 すっかり、汚れ、すさんだ価値観に埋もれかかっていた頃に、私は王太子から呼ばれたのだった。


*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*



 「やぁ、久しぶりだな! 大富豪のワイアット殿。ところで、アレクシス王女が王の不興を買い出戻ってきた。不名誉な事をしでかした妹は王族から籍を抜いた。今や、平民だ。どうだろう? 妹を買ってくれないか?」

 王太子の野卑な提案に私は喜んでのった。アレクシス王女を妻になど迎える気は毛頭ない。しかし、あれほど愛した女性を身近に置いてたまに愛でるのも、良い気晴らしになるだろう。

 女なんて、みんな同じだ。金さえあれば、思いのままなんだ! 

 
 久しぶりに会ったアレクシスは、昔よりさらに美しくなっていた。大国で甘やかされて、さぞ贅沢三昧をしていたのだろう。手の爪は綺麗に染められ、つやつやの肌は、多くの侍女達に傅かれてきたことを物語るものだ。

「・・・・・・貴女は平民の愛人扱いです。贅沢はさせよう。宝石もドレスも思いのままだ。ただ、私の愛は当然求めないでください」

 そう言って、彼女の髪に手を伸ばしキスをして・・・・・・激しく抵抗された。

「貴女は抵抗するな! いつでも雌犬のように私を受け入れればいいんだ! 金だけが好きな売女のくせに」
 
 大国の王太子には、喜んで股を開くくせに私には抵抗するのかと思うと、つい酷い言葉が口から出てしまった。

ここまで、酷い言葉を投げつける気はなかったのに・・・・・・

「ここには、三ヶ月だけいます。愛人としてではなく、あなたの身の回りの世話係としてね。これは、以前貴方を傷つけたお詫びとしてです。ただのお詫びです。お金などいりませんから! 貴方こそ私の愛は求めないでくださいね」

 アレクシスは、驚いたことに金はいらないと言う。しかも、世話係としている? 贅沢がしたくて嫁いだのだろう? 女は、つくづく謎だ。まぁ、好きにすればいい。どうせ、王女の身分だった彼女が使用人の真似などできるわけがないのだから。


*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*

 
 翌朝、アレクシスはすっかり冷たさで白くなった手に雑巾を握りしめ、必死に廊下を拭いていた。そこは、モップだろう? 教えてやると、満面の笑みで説明を聞きモップは便利だとはしゃいでいた。

 この姿は昔の愛し合っていた頃のアレクシスを思い出す。この女性はもとのアレクシスではないのに。私を裏切った性悪な女が、また私を騙そうとしているのかも? 何の為に? もう、私には女を真剣に愛せる純粋な気持ちなどないのに・・・・・・

 アレクシスが、心なしかやつれて足に怪我をしたのはその二日後だった。








 
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