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12 彼に囚われる
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四月八日という日は、私とイヴァンにとって前世では誕生日で命日、今生でも誕生日。
そして――。
私とイヴァンの結婚記念日となった。
ラズドゥノフ帝国でもテューダ王国でも女性は十六、男性は十八から結婚できる。
私を一刻も早く手に入れるために、私が十六となったこの日に、イヴァンはどうしても結婚式を挙げたかったようだ。
前世では双子の姉弟だった。それを考えるとイヴァンと夫婦となるのは何とも複雑な気持ちだが言った所でどうにもならない。
高等部卒業後に結婚する事になっていたので、ウェディングドレスはすでに仕立ててあった。
ただ花婿が馬鹿皇子から皇弟に変更になっただけだ。
ハンク兄様に四肢の骨を折られた馬鹿皇子は、骨折が治り次第、戒律の厳しい修道院に送られるという。
それを聞いても何とも思わない。初対面から偉そうな彼が嫌いだったし、何より、そうなったのは彼の自業自得だ。
花婿が誰であれ、あの人でないなら誰だって同じだ。
このウェディングドレスは、愛する人のために着る訳じゃない。
前世の弟の妻となるために、バージンロードを今生の父親である愛するあの人と一緒に歩く。
それは何とも皮肉に私には思えた。
祭壇の前には、花婿となるイヴァンが待っている。
花婿姿のイヴァンは、人が跪かずにおれないカリスマ性と、そこらの王族や皇族にも負けない圧倒的な気品が加わり、いつにも増して美しく見える。
大抵の女性なら、これほどの男性と結婚できる幸運を神様に感謝するだろう。
けれど、私には、お父様でないなら誰だって同じだ。
しかも、彼は前世の私の弟。いくら今生では結婚できる関係でも決して恋愛対象にはならない。
私は我知らず手を添えていたお父様の腕を強く摑んだだけでなく彼に縋るような眼差しを向けていた。
結婚したくない。
夫となる男性が前世の弟だからとかいうのではなく――。
想いが叶わなくても、ずっとずっと貴方の傍にいたい。
今生の私は王女だ。私の結婚は私だけの問題ではない。一個人としての私の我儘など聞いてもらえるはずがない。
まして、これは許されぬ想いだ。
いつまでも動こうとしない私に、お父様とイヴァンが怪訝そうな眼差しを向けた。
「ベス」
お父様は、ただ私の愛称を呼んだだけ。
けれど、それだけで私は操られたようにお父様から離れ、差し伸べられたイヴァンの手を取った。
イヴァンは思いの外強く私の手を握ると耳元で囁いた。
「ようやく捕まえたんだ。逃がさないよ。絶対に――」
お父様と同じ黒い瞳は射貫くように私を見つめていた。
とても花婿が花嫁に向ける眼差しではない。
禁忌だと分かっていても双子の姉への恋心を消せず、死んでも前世の姉に執着した男だ。
お父様と同じ唯一の人間にのみ執着するこの男から逃げられるはずがない。
私は諦念と共に誓いのキスを受け入れた。
婚約破棄された私は彼に囚われる。
そして――。
私とイヴァンの結婚記念日となった。
ラズドゥノフ帝国でもテューダ王国でも女性は十六、男性は十八から結婚できる。
私を一刻も早く手に入れるために、私が十六となったこの日に、イヴァンはどうしても結婚式を挙げたかったようだ。
前世では双子の姉弟だった。それを考えるとイヴァンと夫婦となるのは何とも複雑な気持ちだが言った所でどうにもならない。
高等部卒業後に結婚する事になっていたので、ウェディングドレスはすでに仕立ててあった。
ただ花婿が馬鹿皇子から皇弟に変更になっただけだ。
ハンク兄様に四肢の骨を折られた馬鹿皇子は、骨折が治り次第、戒律の厳しい修道院に送られるという。
それを聞いても何とも思わない。初対面から偉そうな彼が嫌いだったし、何より、そうなったのは彼の自業自得だ。
花婿が誰であれ、あの人でないなら誰だって同じだ。
このウェディングドレスは、愛する人のために着る訳じゃない。
前世の弟の妻となるために、バージンロードを今生の父親である愛するあの人と一緒に歩く。
それは何とも皮肉に私には思えた。
祭壇の前には、花婿となるイヴァンが待っている。
花婿姿のイヴァンは、人が跪かずにおれないカリスマ性と、そこらの王族や皇族にも負けない圧倒的な気品が加わり、いつにも増して美しく見える。
大抵の女性なら、これほどの男性と結婚できる幸運を神様に感謝するだろう。
けれど、私には、お父様でないなら誰だって同じだ。
しかも、彼は前世の私の弟。いくら今生では結婚できる関係でも決して恋愛対象にはならない。
私は我知らず手を添えていたお父様の腕を強く摑んだだけでなく彼に縋るような眼差しを向けていた。
結婚したくない。
夫となる男性が前世の弟だからとかいうのではなく――。
想いが叶わなくても、ずっとずっと貴方の傍にいたい。
今生の私は王女だ。私の結婚は私だけの問題ではない。一個人としての私の我儘など聞いてもらえるはずがない。
まして、これは許されぬ想いだ。
いつまでも動こうとしない私に、お父様とイヴァンが怪訝そうな眼差しを向けた。
「ベス」
お父様は、ただ私の愛称を呼んだだけ。
けれど、それだけで私は操られたようにお父様から離れ、差し伸べられたイヴァンの手を取った。
イヴァンは思いの外強く私の手を握ると耳元で囁いた。
「ようやく捕まえたんだ。逃がさないよ。絶対に――」
お父様と同じ黒い瞳は射貫くように私を見つめていた。
とても花婿が花嫁に向ける眼差しではない。
禁忌だと分かっていても双子の姉への恋心を消せず、死んでも前世の姉に執着した男だ。
お父様と同じ唯一の人間にのみ執着するこの男から逃げられるはずがない。
私は諦念と共に誓いのキスを受け入れた。
婚約破棄された私は彼に囚われる。
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