神子は再召喚される

田舎

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―――神界に誕生した日のことは遠い昔のことで覚えていない。
ただ生き物に本能があるのに等しく、私にも一つだけはっきりしていたことがあった。
それは与えられた小さな箱庭を見守る使命。


我が君、星の管理者、神―――― 歴史の中で様々な呼び方をされた記憶がある。



(ふふ、今日も頑張ってるねぇ)

沢山の鏡に映し出される箱庭アクゼティアの様子を覗き見ては度々調整を行っていた。
私は人が好きだった。
彼ら優位の恵みを与えたけど、ヒトとはあまり甘やかしすぎると信仰をやめて堕落してしまうと注意を受けた。
それは困る、信仰は神々の栄養だ。
だから時として災害、魔物の増殖、戦争―――そういった試練を与えて星の成長を促す必要があるのだと、私は他の神からのアドバイスに従った。


『あぁ神様、どうかご救済をっ』
『怯むな、決して前線から引くな!我に続け!!』
『だれ、か…助け、て…』
『屈してなるものか。我々が、必ず勝利をこの手に…!!』

さすが私の子供達だ。
どんな困難の中でも強く逞しく生き延び、叡智を持って道を切り開いた。そして他の生き物たちも負けず環境に適応すべく多様な進化を遂げていった。

そして私自身も気まぐれに箱庭の中へ降臨しては彼らを導き、人と触れ合うこともあった。




「よお、引きこもり。元気にしてたか?」

ある日、私の空間に旧友が訪ねてきた。
現在"地球"という星を管理している友は二ホンという国にハマっているらしく、土産だとラノベやマンガと呼ばれる書物を持参してきた。
彼のオススメは「異世界転生」「異世界召喚」と変わったジャンルが最も熱く、面白いらしいが―――――…


「なるほどこれは大変興味深い‥‥君の箱庭にいる人間たちは面白いことを考えるのだな」
「はは、お前んとこの人類は脳筋だらけだからなぁ」
「私の可愛い子供たちを脳筋呼ばわりするなんて失礼じゃないか?」

確かに、新たに取り入れた"瘴気"という災害システムにより発生したモンスターの出現で今は平和な時代ではない。
「今どころかアクゼティアは殺伐としすぎなんだよ…」と友は失笑するけど失礼だな。絶滅しかけてもないんだ、まだ問題のない範囲だと私は憤慨した。

「で、なんの用?私の箱庭を冷やかしにきただけなら帰ってくれるかな?」
「まぁ怒るなって。ちょっと色んな奴らに相談してるんだけどさぁ、お前んとこの人間と俺んとこの人間を交換してみない?」
「は?」

兎に角ヒマなのだと彼は笑う。
曰く、ずっと星の管理をしてやってきたのだからたまには自分たちの娯楽、楽しみがあってもいいだろう?と。

「ほら、この本のあらすじとか読んでみ?いまのアクゼティアと似た世界観だろ?」
「なるほど… 面白いかもね」

正直、瘴気とは難易度が高すぎたのか人々は攻めあぐねている様子であった。奇跡の力、"異世界の訪問者"が救世主になった歴史があってもいいのかもしれない。
他所からきた彼らの存在が、さらに私の箱庭の繁栄させてくれるなら万々歳だ。

「お前んとこの人間はちっと強すぎるからレベルは落とさせてもらうからな?あ、あとサポートはサボるなよ?」
「君のが弱すぎるんじゃない?それに、交換したヒトがそれぞれの星に適応できなくっても仕方のないことだろ?」
「いやいや、物語が始まる前に死んだら意味ないから!別に虐待目的で送るわけじゃないんだぞ?」

「‥‥…あーはいはい」


私たちはまだ永遠とも呼べる時間を過ごすのだ


結局のところ私も―――― 退屈だったようだ。







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