飴玉でハーレム作ろうとしたら男しか寄ってこない

高槻桂

文字の大きさ
12 / 32

飴玉でハーレム作ろうとしたら男しか寄ってこない11

しおりを挟む
 その子が産まれたのは八月の五日。きっかり三ヶ月後だった。
 ずっしり元気な男の子。耳と尻尾がペルルカ譲りだけれど俺の血が強く出ている気がする。漆黒の髪に黒い瞳。
 名前はペルルカがつけた。
 アローチャ。導くもの、という意味だそうだ。
 そこで初めて俺はペルルカという名前にはなにか意味があるのだろうかと思って聞いてみた。
「俺の名前は黒鉄の槌、という意味だ」
「らしいっちゃらしい名前だね。強そうで格好いい。ヒロエはなにか意味がある?」
「一番星、という意味だ」
「ヒロエ知ってた?」
「初めて知った!」
「ヒロエのお母さんは……あれ、ちょっと待って。ヒロエってかあちゃんって呼んでたよね。お母さんから生まれたの?この世界で言うならお父さんじゃないの?」
「かあちゃんは女だった。鬼族は人間より女の割合が多い。だからかあちゃんだ」
「そうなんだ。ヒロエのお母さんはきっとヒロエのことが希望に思えていたんだろうね」
「希望?」
「そうだよ。じゃなきゃ一番星なんて素敵な名前つけないよ」
「素敵……アローチャも素敵な名前」
「そうだね、素敵な名前だ」
 俺は腕の中の赤子を見下ろして微笑んだ。


 子育ては戦争だと言ったのは誰だったか。
 三時間おきのミルク、あっという間に湿っているおむつ、気を抜くと昼夜問わず響きわたる泣き声。
 昼過ぎ、ちょっとカウチでうとうととしていたらふえ、と泣き出す気配がしてはっと目を覚ます。
「どうした、ミルクはさっき飲んだだろ?おむつかな?」
 おむつを確認したら案の定濡れていた。まだ慣れない手付きでおむつを替えてぽんとそのまんまるお腹を軽く叩いた。
「はい、出来上がり」
 きれいになってもむすっとしているアローチャによし、散歩に行こう、と思う。
「ヒロエー!散歩行くけど行くー?!」
 窓から庭に向かって声をかけると家庭菜園の草むしりをしていたヒロエが立ち上がって行くー!と答えた。
 俺は抱っこ紐でアローチャをしっかり抱くとヒロエを伴って家を出た。
「あー」
 空に浮かぶ雲を掴もうとしているのか手をわちゃわちゃと伸ばすアローチャ。
「チャーチャはあっという間にご機嫌だねえ」
 チャーチャというのはアローチャの愛称だ。チャッチャちゃんと呼ぶこともある。
「今日は教会に行ってみようか」
 教会にはアローチャが産まれてすぐに顔を見せに行って以来行っていない。もう気づけば二ヶ月近く教会に顔を出していなかった。
 ユリアさんにも会いたいし、と教会への道のりを歩いて行く途中で果物の籠盛りを買った。今日は流石にパイを焼いている暇はなかったのだ。
 教会に入ると途端にアローチャは静かになった。彼もなにか感じるものがあるのだろうか。
「コウ様いらっしゃいませ。ヒロエ様もアローチャ様も」
「こんにちは、ユリアさん。ほら、チャーチャも挨拶して?はいこんにちはー」
 小さな手を掴んで振ってみせるとユリアさんはまあ、と顔をほころばせた。
「ユリアねえちゃんこんにちは」
「ヒロエ様もこんにちは。いつものお部屋にご案内いたしますわね」
「あ、そのまえにこれ」
 と俺は果物の籠盛りをさしだす。
「今日はパイ焼いてくる暇がなかったから祭壇に備えてもらえますか?」
「かしこまりました」
 籠盛りを渡していつもの小部屋に通してもらう。
 ユリアさんが出ていくのを見届けて、俺はサクマさんに声をかけた。
「神様呼んでくれるかな」
「はーい!」
 ぱんっとサクマさんが弾けて執事姿の神様が現れた。優男顔がもう定着したらしい。
「久しぶりだね、バンビーノ。来てくれなくて寂しかったよ」
 アローチャは初めて見る神様を不思議な感情の浮かんだ目で見上げていた。
「すみません、育児で忙しくて」
「アローチャも元気だね。ヒロエは元気がない?」
「え?そうなの?」
 全然気づかなかった、とヒロエを見ると彼は恥ずかしそうに唇を尖らせてもじもじと手をいじくった。
「……コウにいちゃんもペルルカにいちゃんもチャーチャのことばっかりで俺と遊んでくれない」
 あーそうか、アローチャのことで頭が一杯でヒロエのことを蔑ろにしてしまっていたのかもしれない。
「そっか、ごめんな、ヒロエ」
「ううん、チャーチャは目を離せないのはわかってる。だからいい」
「でもヒロエが我慢することないんだよ。……よし、今度からチャーチャと三人でお昼寝しよう?ペルルカもいるときは四人で。ミルクもヒロエ、あげてみる?一緒にチャーチャを育てていこうよ」
「うんっ」
 ヒロエは嬉しそうに笑った。そう言えば確かに彼のこんな笑顔を見るのは久しぶりだった。思い返してみればここ最近のヒロエはどこか遠慮がちに笑っていた。
 視野が狭くなるのは俺の悪い癖だ。みんなで子育てをしていこう。
 すると神様がぱちんと指を鳴らしてもう片方の手に茶色いくまのあみぐるみを取り出した。
「これをアローチャに」
 にっこりと笑って神様がアローチャに差し出すと、アローチャはきらきらとした目であみぐるみを見たあと小さな手でそれを掴んだ。
「出産祝いだよ」
「よかったねえ、チャーチャ」
「あーう」
 あみぐるみを抱え込んだアローチャを穏やかな目で見下ろして、神様は不意に俺の顎先をつまんで持ち上げるとちゅっとキスをしてきた。
「あ!」
 ヒロエが声を上げる。きょとんとしていると神様はたまには私のこともかまっておくれ、と笑った。
「神様でも寂しいって思うの?」
「そりゃあ思うさ。私だってもとは人間だからね。そういう感性は残っているよ」
「そうなんですね」
 どれくらい昔の話なんだろう。地球を作ったくらいだからそれよりは長く生きているはずだ。
「天からきみたちを見ているのは楽しいけれど、やはりたまにはこうして直接触れ合いたいと思うよ」
 その言葉に俺はもうちょっと頻繁に教会に来よう、と思った。



(続く)
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

処理中です...