父の後妻に婚約者を盗られたようです。

和泉 凪紗

文字の大きさ
2 / 8

2.お義母様への疑惑

しおりを挟む
 わたしがお義母様の妊娠に驚いたのには理由がある。残念ながら、お父様は子供の頃の病気が原因で子供が望めない。お父様の家族は皆それを知っていだけれど、お父様を可哀想に思ったお祖父様達は知らせなかったらしい。奇跡的に子供ができるかもしれなかったから……。
 娘のわたしがいるのなら子供ができるのでは? と思うかもしれない。けれど、わたしはお父様の姪なのだ。お母様とお父様は十年以上子供ができなかったし、お義母様とも八年は子供ができなかったのだ。やはり、お父様には子供を作れないのだと思う。
 わたしも知らなかった。お母様の日記帳を読むまでは……。子供ができなければ本当のお母様であるオレリア母様が産んだ子か親戚の子を養子にするつもりだったらしい。
 わたしが赤ん坊の頃にオレリア母様達が事故にあって亡くなってしまったため、お父様達に引き取られたようだ。二人とも実の子供のように可愛がってくれたし、養子だなんて疑わなかった。
 お母様はオレリア母様と親友で、お父様のことは小さな頃から大好きで全てを承知で結婚したそうだ。オレリアお母様は子供ができないかもしれないからと結婚にはあまり賛成ではなかったらしい。それでも、お父様が好きだからと……。大好きなお父様の子供を授かれなかったことは哀しかったけどわたしの母親になれて良かったと書いてある。奇跡は起こらなかったけれど、大事な親友の代わりにオレリアたちの子供を大切に育てていくと……。
 わたしはこの日記帳の内容を誰にも話すことはできなかった。お父様に内緒にしていることをわたしが暴くわけにはいかないし、なにより二人とも実の親としてわたしを育ててくれたのだ。関係を壊したくなかった……。真実を知ってしまった時にはすでにお父様に秘密にしようとしていた人たちは皆いなくなってしまっていて誰にも相談できなかった。

 そんな事情があるため、『お義母様のお腹の子は誰の子なのか?』と心配になった。奇跡が起こって本当にお父様の子供ができたのなら良い。けれど、お父様の子ではなかったら? お父様のあの喜びよう。やはり自分の子供が欲しかったんだと思う……。
 お義母様が浮気していないならそれで良い。お義母様は後妻ではあるけれど、わたしには姉のようによくしてくれた。お義母様を疑いたくはないけれど……。
 うじうじしていても仕方ない。お父様のためにも浮気していないかどうか、調べよう!

 とはいえ、わたし一人では調査するのは難しい。昔からこの家に仕えてくれているジョゼフに相談することにした。

「ジョゼフ、ちょっと相談があるのだけど良いかしら?」
「アルティナお嬢様、どうされましたか?」
「他の人には聞かれたくない相談なの……」
「アルティナ様のお部屋へお茶をお持ちしますね」

 ジョゼフの顔が少し強張ったように見えた。わたしは部屋でジョゼフを待つことにする。

 コンコン、とドアをノックする音がした。

「お嬢様、ジョゼフです。お茶をお持ちしました」
「入って」
「失礼いたします」

 ジョゼフはお茶を用意してくれた。

「相談があるから座ってくれる?」
「はい。……それで相談とは何でしょうか?」
「……うん。実はお義母の妊娠のことなの」
「それはどういった意味でしょうか?」
「お腹の子はお父様の子なのかしら」
「何か疑うようなことがありましたか?」

 ジョゼフははっきりとしたことは言わない。

「あのね、実はわたし知っているの。お父様には子供ができないって……」
「……どうしてそれを……」
「お母様の日記帳に書いてあったわ。だからわたしが二人の実の子供ではないことも知っているの」
「ご存じだったのですね……」
「えぇ……。だからお義母様の話を聞いて驚いてしまって……。昔からこの家にいるジョゼフならこのことを知っているじゃないかと思ったの」
「わたしももしかして……とは思ったのですが、旦那様に子供ができないことを知っている人間はいません。わたしが疑問を口にすれば旦那様やアルティナお嬢様が知らなくても良いことで傷ついてしまいます」
「余計な気苦労をかけてごめんなさい。ジョゼフには申し訳ないけど、わたしもこの秘密を共有できる人がいて良かった……」
「お嬢様……」
「ねぇ、お義母様が浮気をしていないか調べても良いと思う? やっぱり調べない方がみんな幸せになれるのかしら」
「……何が正解かはわたしにもわかりません。ですが、もし浮気相手がいるのならばそれははっきりさせた方が良いかと思います。何も知らない旦那様がお可哀想ですし、浮気相手の子をこの家に入れるわけにはいきません。浮気の事実がないのであればわたしたちの胸に秘めておけば良いのではないでしょうか。このままではお嬢様もすっきりしないでしょう」
「ジョゼフ……ありがとう」
「では、早速調べましょう」
「えっ? そんな簡単に調べられるの?」
「奥様は頻繁に外出されていますから……。そちらをつけていけば証拠が得られるのではと思います」
「そんなに頻繁にお出かけしていたのね……。知らなかったわ」
「アルティナお嬢様はお勉強でお部屋に籠もられていることが多いですから……。それに特にここ一年はお金の支出が多かったり、物が増えていたりもしていますので、かなり怪しいと思います」
「そうだったのね……」
「奥様の動向はこちらのほうでしばらく調査いたします。結果が出るまで少々お待ちください」
「よろしくお願いしますね、ジョゼフ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

うちに待望の子供が産まれた…けど

satomi
恋愛
セント・ルミヌア王国のウェーリキン侯爵家に双子で生まれたアリサとカリナ。アリサは黒髪。黒髪が『不幸の象徴』とされているセント・ルミヌア王国では疎まれることとなる。対してカリナは金髪。家でも愛されて育つ。二人が4才になったときカリナはアリサを自分の侍女とすることに決めた(一方的に)それから、両親も家での事をすべてアリサ任せにした。 デビュタントで、カリナが皇太子に見られなかったことに腹を立てて、アリサを勘当。隣国へと国外追放した。

【完結】姉の婚約者を奪った私は悪女と呼ばれています

春野オカリナ
恋愛
 エミリー・ブラウンは、姉の婚約者だった。アルフレッド・スタンレー伯爵子息と結婚した。  社交界では、彼女は「姉の婚約者を奪った悪女」と呼ばれていた。

その令嬢は、実家との縁を切ってもらいたい

キョウキョウ
恋愛
シャルダン公爵家の令嬢アメリは、学園の卒業記念パーティーの最中にバルトロメ王子から一方的に婚約破棄を宣告される。 妹のアーレラをイジメたと、覚えのない罪を着せられて。 そして、婚約破棄だけでなく公爵家からも追放されてしまう。 だけどそれは、彼女の求めた展開だった。

名も無き伯爵令嬢の幸運

ひとみん
恋愛
私はしがない伯爵令嬢。巷ではやりの物語のように義母と義妹に虐げられている。 この家から逃げる為に、義母の命令通り国境を守る公爵家へと乗り込んだ。王命に物申し、国外追放されることを期待して。 なのに、何故だろう・・・乗り込んだ先の公爵夫人が決めたという私に対する処罰がご褒美としか言いようがなくて・・・ 名も無きモブ令嬢が幸せになる話。まじ、名前出てきません・・・・ *「転生魔女は国盗りを望む」にチラッとしか出てこない、名も無きモブ『一人目令嬢』のお話。 34話の本人視点みたいな感じです。 本編を読まなくとも、多分、大丈夫だと思いますが、本編もよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/novel/618422773/930884405

裁判を無効にせよ! 被告は平民ではなく公爵令嬢である!

サイコちゃん
恋愛
十二歳の少女が男を殴って犯した……その裁判が、平民用の裁判所で始まった。被告はハリオット伯爵家の女中クララ。幼い彼女は、自分がハリオット伯爵に陥れられたことを知らない。裁判は被告に証言が許されないまま進み、クララは絞首刑を言い渡される。彼女が恐怖のあまり泣き出したその時、裁判所に美しき紳士と美少年が飛び込んできた。 「裁判を無効にせよ! 被告クララは八年前に失踪した私の娘だ! 真の名前はクラリッサ・エーメナー・ユクル! クラリッサは紛れもないユクル公爵家の嫡女であり、王家の血を引く者である! 被告は平民ではなく公爵令嬢である!」 飛び込んできたのは、クラリッサの父であるユクル公爵と婚約者である第二王子サイラスであった。王家と公爵家を敵に回したハリオット伯爵家は、やがて破滅へ向かう―― ※作中の裁判・法律・刑罰などは、歴史を参考にした架空のもの及び完全に架空のものです。

(完結)無能なふりを強要された公爵令嬢の私、その訳は?(全3話)

青空一夏
恋愛
私は公爵家の長女で幼い頃から優秀だった。けれどもお母様はそんな私をいつも窘めた。 「いいですか? フローレンス。男性より優れたところを見せてはなりませんよ。女性は一歩、いいえ三歩後ろを下がって男性の背中を見て歩きなさい」 ですって!! そんなのこれからの時代にはそぐわないと思う。だから、お母様のおっしゃることは貴族学園では無視していた。そうしたら家柄と才覚を見込まれて王太子妃になることに決まってしまい・・・・・・ これは、男勝りの公爵令嬢が、愚か者と有名な王太子と愛?を育む話です。(多分、あまり甘々ではない) 前編・中編・後編の3話。お話の長さは均一ではありません。異世界のお話で、言葉遣いやところどころ現代的部分あり。コメディー調。

虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~

***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」 妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。 「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」 元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。 両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません! あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。 他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては! 「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか? あなたにはもう関係のない話ですが? 妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!! ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね? 私、いろいろ調べさせていただいたんですよ? あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか? ・・・××しますよ?

婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~

ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された 「理由はどういったことなのでしょうか?」 「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」 悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。 腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。

処理中です...