父の後妻に婚約者を盗られたようです。

和泉 凪紗

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4.父の後妻に婚約者を盗られたようです

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 わたしには一人でお義母様とその浮気相手とやり合えるか自信はない。今もジョゼフに付き合ってもらっている。きっと、わたし一人では身を隠して別荘を見張るなんてまねは難しいだろう。
 お義母様は別荘に滞在中にどこかに出かけている気配はなさそうだった。ただ、誰かが訪れているらしい。何度か来ている人物のようなので、これが浮気相手なのかもしれない。とりあえず誰が来ているのか確かめなくては……。

 別荘に入ると使用人たちが出迎えてくれた。特に連絡はしていなかったのに歓迎してくれる。

「アルティナお嬢様。ようこそいらっしゃいました。良かったです。ユーシス様とご予定が合ったのですね」

 ユーシス様? 別荘で一緒に過ごしたいとは思っていたけれど、誘ったかしら? お父様が気を利かせてユーシス様を誘ってくれた? まさか、何度もここに来ている人って……。 

「ユーシス様がいらしているの?」
「はい。いらっしゃっていますよ。こちらで一緒に過ごす予定だったのに直前で予定が合わなくなってしまったんですよね。一緒に過ごせるようになって良かったです」

 この屋敷の使用人は「良かったですね」と言ってくる。皆わたしがユーシス様が大好きなのを知っているからだろう。でもわたしもジョゼフも嫌な考えしか浮かばない。

「ねぇ、ジョゼフ……もしかして……」
「……その予想が外れていることを祈っています」
「ユーシス様はお義母様のお部屋にいらっしゃるのかしら?」
「はい。奥様がこちらでご静養と聞いて毎日のようにお見舞いにいらしています。アルティナ様の代わりにと。本当に婚約者思いの方ですよね」

 わたしはそんなことは聞いていない。これはもう覚悟を決めるしかなさそうだ。

「ジョゼフ、行きましょう……」
「はい」
  
 わたしたちはお義母様の部屋の前で立ち止まった。中の様子を窺うと人の気配がする。わたしは意を決してお義母さまの部屋のドアを開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
 そう。ユーシス様とお義母様はベッドの上で抱き合っていた。しかも裸で……。お義母様の浮気相手はわたしの婚約者様だったのだ。

「アルティナ? どうしてここに?」 

 わたしに気がついたユーシス様はとても焦った声だ。わたしは努めて平静を装う。

「ユーシス様、どうしてここに? はわたしの台詞です。いったい、お義母様と何をなさっているのですか?」
「えっと、その……」
 ユーシス様はしどろもどろだ。

「わたしは何をなさっているのかきいているのですが」
「……そうだ、あれだよ。アルティナと結婚後に困らないようにロレッタ様にいろいろと手ほどきをしてもらっていたんだ! そう。だからやましいことはなにも……」
「ありますよね? 子供まで作っているんですから」
「子供? 確かにロレッタ様は妊娠しているそうだがアルティナのきょうだいになる子だろう」
「いいえ、残念ながらその可能性は低いと思われます」
「どうしてそんなことが言えるんだ」
「……お父様は子供ができない体だからです」
「いやいや。きみという娘がいるじゃないか」
「わたしはお父様の妹の子供で養子なんです。赤ん坊の時に引き取られたそうです」
「だからって僕の子供とは限らないだろう?」

 お義母様はユーシス様の隣で真っ青になっている。まさかお父様に子供ができないとは思っていなかったのだろう。お義母様もわたしが養子だと知らなかったのだから。

「お義母様にユーシス様以外のお相手がいないのであればお腹の子の父親はユーシス様です……」
「いや、僕のほかに相手がいるかもしれないじゃないか。僕の子とは限らない」
「いいえ、ほかに相手などいません……」

 お義母様はちからなく否定した。お父様と再婚してからずっと子供ができなかったのだ。自分の方に原因があるのかもと油断していたのかもしれない。

「旦那様が子供のできない体だなんて聞いていません……。わたくしは旦那様にだまされた被害者です!」
「奥様、旦那様はだましてなどおりません。ご存じなかったのです」
「知らなかった……?」
「えぇ……。旦那様は幼い頃の病気が原因で将来子供を持つことが難しいだろうと医者に言われておりました。当時、体の弱かった旦那様の自信をこれ以上奪うのは可哀想だと旦那様には内緒にすることにしたのです」

 ユーシス様もお義母様も呆然と話を聞いている。

「亡くなられた奥様ともロレッタ様ともずっと子供ができなかった旦那様は何か思うところがあったのかもしれません。ですが、今回ロレッタ様がご懐妊しました。旦那様の喜びがどのようになるかおわかりいただけますか?」
「そんな……。でもひどいわ。だまされていたことは違わないじゃない」
「ロレッタ様のお父上にはお話しされていると思います」
「え?」
「旦那様とロレッタ様の再婚はロレッタ様のお父上が望まれたものでしたから……。当時、未亡人になってしまった娘をぜひもらって欲しいと大旦那様に強くお願いしたのです。旦那様は奥様を失った悲しみで新しい妻を迎えることには消極的でした。そこをロレッタ様のお父上がいろいろな条件をのみ、それならば……と大旦那様が旦那様を説得してお迎えすることになりました」

 お父様とお義母様は普通に仲が良かったから二人のなれそめは少し意外に感じた。だが、今気にしなければいけないことはお義母様のお腹の子だろう。
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