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包囲されたはじめての街
1590年6月25日・越後・春日山城
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春日山城留守居役である千坂景親は、とある一行と面会していた。
彼らは加賀前田家一行。主君・上杉景勝と共に小田原征伐に参戦している前田利家の家臣達である。
実は、このところ、領内で関白殿下が亡くなったという噂が流れており、
戦場からやってきた彼らに真偽を訪ねようと思ったのだが、思わぬ人物が同席していた。
北条氏邦
剃髪しているが言わずと知れた北条の猛将である。
もともと外交が主任務だった景親は、上杉家が北条家と同盟していた所謂越相同盟時代に会った事あったのだ。
前田一行が氏邦を加賀に護送中であることは聞いていたが、まさかここに連れて来るとは思わなかった。
「久しいな、氏邦殿。山王川で共に釣りをしたのを良く覚えておるぞ」
『はは、某もよく覚えております。楽しい思い出でございますな』
「そうだな。それにして、此度は難儀であったな」
『上杉様、前田様のお力に圧倒されましてございます。幸いにも上杉様、前田様のおかげで助命が叶ったので、拙僧は能登で余生をおくる所存にございます』
は?この男、今、なんと言った?
上杉様と言わなかったか?
北条は、先代御実城様の関東管領就任を認めておらず、常に我らを長尾と呼んでいた。それは越相同盟中も変わらなかった。尤も我らも奴らを終生、伊勢と呼んでいたがな。
それがどうだ?氏邦が我らを上杉と呼ぶとは!もはや氏邦は独立志向を諦め、関白殿下の天下の下に入ったということではないか?
やはり、領内の噂は風魔の放った流言であったか。
関白殿下が本当に亡くなったのであれば、風魔めはなんとしても氏邦を取り戻そうとする筈だからな。
「氏邦殿、長旅で疲れたであろう。今宵はゆっくりと休まれよ」
その後、景親は領内に出回っている縷言に惑わされないよう、支城に通達を出し、合わせて軒猿(上杉の忍び)に風魔に警戒するよう指示したのだった。
彼らは加賀前田家一行。主君・上杉景勝と共に小田原征伐に参戦している前田利家の家臣達である。
実は、このところ、領内で関白殿下が亡くなったという噂が流れており、
戦場からやってきた彼らに真偽を訪ねようと思ったのだが、思わぬ人物が同席していた。
北条氏邦
剃髪しているが言わずと知れた北条の猛将である。
もともと外交が主任務だった景親は、上杉家が北条家と同盟していた所謂越相同盟時代に会った事あったのだ。
前田一行が氏邦を加賀に護送中であることは聞いていたが、まさかここに連れて来るとは思わなかった。
「久しいな、氏邦殿。山王川で共に釣りをしたのを良く覚えておるぞ」
『はは、某もよく覚えております。楽しい思い出でございますな』
「そうだな。それにして、此度は難儀であったな」
『上杉様、前田様のお力に圧倒されましてございます。幸いにも上杉様、前田様のおかげで助命が叶ったので、拙僧は能登で余生をおくる所存にございます』
は?この男、今、なんと言った?
上杉様と言わなかったか?
北条は、先代御実城様の関東管領就任を認めておらず、常に我らを長尾と呼んでいた。それは越相同盟中も変わらなかった。尤も我らも奴らを終生、伊勢と呼んでいたがな。
それがどうだ?氏邦が我らを上杉と呼ぶとは!もはや氏邦は独立志向を諦め、関白殿下の天下の下に入ったということではないか?
やはり、領内の噂は風魔の放った流言であったか。
関白殿下が本当に亡くなったのであれば、風魔めはなんとしても氏邦を取り戻そうとする筈だからな。
「氏邦殿、長旅で疲れたであろう。今宵はゆっくりと休まれよ」
その後、景親は領内に出回っている縷言に惑わされないよう、支城に通達を出し、合わせて軒猿(上杉の忍び)に風魔に警戒するよう指示したのだった。
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