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派遣秘書のとんでもない日常
イケメンを愛でながら呑みたい
しおりを挟む二時前になり、あまりはもう一度、海里にお茶を出してから帰ることになった。
「これからカフェ? 偉いわね」
と秋月に言われる。
「カフェ何時まで?」
「五時半までです」
「じゃあ、今日、呑みに行かない?
貴女の歓迎会やりましょうよ。
ねえ」
と秋月が見ると、桜田が、コクコクと頷く。
「室長、どうされますか?」
室長? ともう一度秋月が呼びかけると、室長は、
「いやあ、私は遠慮しますよ。
家内が夕食作って待ってるので」
と言った。
……喋った、と思ってしまった。
いや、黙々と仕事はされているのだが、置物のようなおじいさんだと思っていたから。
あとで聞いたことだが、実は、室長は昔は、社長秘書をされていて。
もう退職していたのを海里が支社長になるときの手助けとして、わざわざ社長に呼び戻されたのだということだった。
そのとき、ちょうど外を通りかかった寺坂を秋月が手招きする。
はあ、と寺坂がやってきた。
「今日、南条さんの都合が良ければ、歓迎会やろうと思うんだけど」
いや、私の都合確認せずに、もう話進んでますよねーと思っていると、
「貴方も来るわよね」
と寺坂は言われていた。
寺坂さんも妻が、とか言って断るのかな、と思っていると、
「はあ、そうですね。
まあ、時間によっては」
というような曖昧なことを言ってきた。
そういえば、指輪もしてないし、独身なのかな? と思っていると、秋月が、
「来るわよね?」
と繰り返す。
はあ、とまた、仕事のときからは想像もつかない、曖昧な返事を寺坂も繰り返す。
なんか、此処の力関係見えたな、と思って、眺めていた。
「ただいま、帰りま……」
カフェに戻ったあまりは、笑顔でそう言い終わらないうちに、
「はい、これ、テラス席の木の下のとこです」
と沙耶にトレーを渡された。
ま、まだ着替えてもないんですが??? と思いながらも、そのまま運ぶ。
「忙しそうね」
戻ってきて、カウンターで言うと、沙耶が、
「おやつどきですからね」
と言う。
もうすぐ三時だった。
「さっさと着替えてきてくださいよ」
と言われ、はーい、と引っ込もうとすると、沙耶が、
「あまりさん」
と呼んできた。
はい? と振り向くと、
「格好だけは、いい感じにキャリアウーマンです」
と言って、グッと親指を立ててきた。
いや……それ、褒めてんの? と思いながらも、ありがとう、と言って、奥へと入る。
すると、備品を取って戻ってこようとしていた成田と出会った。
「お疲れさまですっ」
「あれからどうだった?」
「あのあと、また支社長に珈琲持ってったんですけど。
美味いの不味いの、うるさかったです」
と言うと、笑っていた。
「あ、成田さん。
今日、秘書室の方が、歓迎会やってくださるそうなんですけど。
ぜひ、成田さんもって言ってました」
「え? なんで?」
「……手伝いに来られたからじゃないんですか?」
そう曖昧に笑って誤摩化したが、本当のところ、秋月が、
『イケメンを愛でながら呑みたい』
と言い出したからだ。
寺坂さんではご不満なのだろうか。
ちょいと凶悪なご面相ではあるし、ゴツいが、イケメンには違いない。
『じゃあ、支社長を呼んだらいいじゃないですか』
ちょっと偉そげなところが鼻につくが、あれほどのイケメンはなかなか見ないが、と思って言うと、みんな、フルフルと首を振る。
緊張して困るから、と言うのだ。
『支社長というのも寂しい職業ですねえ。
呑み会にも呼んでもらえないなんて』
と言って、
『いや、別に我々の呑み会に呼ばなかったからって寂しいとは思わないと思うけど。
っていうか、あんた、どっちサイドに立って言ってんの』
と言われてしまった。
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