あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ

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派遣秘書のとんでもない日常

酔った勢いでご無礼を働きそうな人が居るので……

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「……では、失礼致します」
と寺坂が挨拶すると、

「どうした。
 今日は帰り支度が早いな、寺坂」
と海里が言ってくる。

 どうしようかな、と迷った。

 ……南条様の歓迎会だとか言ってしまうと、来たいとおっしゃりそうなんだが。

 自分は構わないのだが、お連れすると、桜田は緊張しそうだし、秋月さんは酔った勢いで、ご無礼を働きそうだ。

「いえ、なんでも。
 ちょっと用事が……」

 失礼致しますっ、と寺坂は飛んで逃げた。

 支社長すみませんっ、またの機会にっ、と走り去る。



 怪しい……。

 まだ帰り支度をしていた海里は、寺坂が消えたドアを見つめていた。

 だいたい、隠し事のできない男だからな。

 それで雇っているのもあるのだが。

 それにしても、あの様子はなにかある。

 忠誠心厚い寺坂にそれを翻させることが出来るのは……。

 ……秋月さんか?

 室長では無理だし。

 そもそも、室長がそんな指示を出しそうにはないし。

 他には思い当たらない。

「怪しいな……」
と口に出して呟きながら、まだドアを見つめていた。



 歓迎会には、結局、成田も来てくれた。

 本当は、店が閉店してから来ると言ってたのだが、マスターが、
「いいよ、行ってきなよ」
と言ってくれたのだそうだ。

 成田を早めに上がらせてくれることもあり、呑み会の時間まで、ちょっとあったので、あまりも五時半過ぎても働いてみた。

 昼間と少し客層が違っていて、面白いし。

 日が落ちて来た中、テラス席のテーブルや木にランプが灯って、これはこれでいい感じだな、と思いながら、気持ちよく働いた。

「なんだか悪かったですね」

 秋月たちと待ち合わせた店に向かいながら、あまりが言うと、

「いやまあ、田村たちも居るし」
と夜のバイトの人なので、今まで顔を合わせたことのなかったスタッフの名前を挙げてきた。

「それに、ちょっと心配だったからな」
「え?」

「……海里が来るかもしれないじゃないか」

 何故、来てはいけないのでしょう。

 そして、この間から、罵るときだけ、支社長を名前で呼んでいる気がするのですが。

 罵るたびに、親しさが増しているとか?

 いや、そんな莫迦な。

 でも、喧嘩するほど仲がいいと言うからな。

 遠慮がなくなって、近づいて行っているのかもしれない。

 まあ、この二人になにを争うことがあるのかは知らないが。

 そんなことを考えているうちに、店に着いていた。


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