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ささやかなるお見合い
転職した会社でお茶の淹れ方がうまいから、見合いしないかと言われました
しおりを挟む会社帰り。
雑貨屋で可愛い日記帳を見つけた白雪万千湖は、
よしっ。
転職記念にこれを買って、日々起こるささやかなことなど書き記そうっ、
と心に決めた。
だが、毎日慣れない仕事で疲れて、寝てしまい、書かないまま数日が過ぎていた。
しかし、ある日、衝撃的な出来事があり。
ついに万千湖はその新品の香り漂う日記を開き、書くことにした。
2021.10.9
今日、隣の部署の部長が訪ねてきたので、お茶をお出ししたら、淹れ方がうまいという理由で、
「うちの息子と見合いしてみないかね?」
と言われました。
特に乗り気ではなかったけど。
なんでも経験してみるのは悪くない、と思い、見合いすることにしました。
見合いとか初めて。
なに着て行こうかなあ。
2021.10.10
今日はホテルのレストランの個室で、お見合いでした。
これ、何処に着ていけばいいのかなと思いながら買った可愛いワンピースを着ることができ、とりあえず、満足でした。
でも、急に好きなひとがいると言い出したとかで、部長の息子さんはお見合いには来られませんでした。
お見合いが決まって初めて、自分のほんとうの気持ちに気づかれたそうです。
「いや~、申し訳ない」
汗をかきかき謝る部長に、
いえいえ、このお見合いが部長の息子さんが幸せになるきっかけとなれてよかったです、
と思ったとき、部長が言いました。
「それでね。
誰か他に、若いいい男はいないかなと思って。
急いで会社行って、休日出勤してる若いやつ、引っ張ってきたんだよ~」
その人は、今、忙しい人では……。
っていうか、社内の人なら、その人はすでに知っている人なのでは、とは思ったのですが。
まあ、広い社内だし。
知らない素敵な人もいるかもな。
そう思い直したそのとき、部長が言いました。
「近い部署だから、会ったこともあるかもしれないが。
うちの部覗いたら、ちょうど課長の……」
えっ?
雁夜課長っ?
と私は身を乗り出しました。
雁夜課長は感じが良くて、やさしい印象で。
若くして課長になったのに、ちっとも偉そうじゃなくて、人気の人です。
いや、転職したばかりで、よくは存じ上げないのですが。
みなさん、そうおっしゃってる人なので、私は期待しました。
「ああ、来た来た」
と部長が笑顔で振り返りました。
やはり、忙しいところを引っ張ってこられたようで、遅れての到着です。
「うちの部にちょうど来てた、経理の課長、小鳥遊くんだ」
いや、そっちっ、と思ってしまいました。
ごめんなさい……。
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