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ささやかなるお見合い
万千湖の日記
しおりを挟む2021.10.17
課長と回転寿司に行きました。
そのあと、水族館に行って、課長にカチョウを買ってもらいました。
課長はシラユキを買いました。
車に乗っていたら、シラユキが飛んできました。
課長と古書店に行きました。
帰り送ってもらいました。
こんなもんかな、と日記を閉じようとした万千湖だったが。
そういえば、回転寿司であの人と出会ったんだった、と思い出す。
えーと……確か、船田くん。
『君は僕らに呪いをかけたんだよ』
って言ってた人かな。
元気そうだったな。
以前なら、この話を一番に書いてたろうな、とふと思った。
そのとき、駿佑からスマホにメッセージが入ってきた。
『今着いた』
『お疲れ様です。
本日はどうもありがとうございました』
『来週の日曜とかどうだ』
『いいですね』
なんの前置きもないが、デートの話だろうと思い、返事した。
すると、そこで打つのが面倒くさくなったらしい駿佑から電話がかかってきた。
「何処か行きたいところはあるか?」
そのとき、万千湖の目に日記の横に置いてあったチラシが映った。
さっきポストに突っ込まれていた住宅展示場のチラシだ。
イベントがあって、クレープの屋台なんかも出ているらしい。
いいな……クレープ。
「このクレープおいしそうですね」
「どのクレープだ」
「あ、すみません。
今、住宅展示場のチラシを見てて」
「これか」
と駿佑が言う。
駿佑の家のポストにも入っていたようだ。
「行きたいのか、住宅展示場」
「あー、好きなんですよね~、住宅展示場。
でも、買わないのに行くのも悪いですよね。
あっ、でもそういえば、実家、建て替えるかもしれないって言ったんですよ。
ちょっと見に行ってみたい気もしますね」
「じゃあ、日曜、住宅展示場に行ってみるか」
「いいですねー」
あっさり話はまとまり、日曜日、駿佑がマンションまで迎えに来てくれることになった。
住宅展示場か。
楽しみだな~。
お母さんたちに実家の建て替えの参考になればと思って見に行くって言おうかな。
いや、一緒に行くとか。
その日より他の日がいいとか言い出しそうだから、またにしよっと。
万千湖はまた日記を開いた。
『課長と住宅展示場に行くことになりました』
今度はスケジュール帳を開く。
『約束』のシールと回転寿司の文字の下に、水族館、と書き足す。
そして、その下。
次の日曜の枠に、さあ、いよいよっ、と一生使うことがないと思っていたデートのシールを貼り、住宅展示場、と書き込んだ。
まだ空白の多いスケジュール帳に、ランチ、約束、デートのシールが貼られ、予定が書き込まれているのを眺めながら万千湖は呟いた。
「うん。
OLらしい手帳になってきた」
瑠美が聞いていたら、
「えっ? そう?
っていうか、水族館が約束で、住宅展示場がデートってどうよ?」
と言ってきそうだったが。
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