OL 万千湖さんのささやかなる野望

菱沼あゆ

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ささやかなる弁当

万千湖の願いごと

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 ……当たりました。

 いや、まだ一次なんですが。

 連絡があったそうです。

 数日して、万千湖は日記にそう書いていた。

 次の抽選はラジオ発表。

 万千湖は100均で買った七福神に手を合わせる。

 ……親に、
「抽選、一次は当たったよ~」
といきなり報告してみたのだが。

 まったく当選するなどとは思っていないようで、喜びなどなく、

「は?
 モデルハウス?

 あんたいつ住宅展示場に行ったの?
 ひとりで行ったの?
 暇なの?」
と突っ込まれる始末だった。

 なんとなく駿佑のことを言い出しづらく、
「えーと。
 住宅展示場のヒーローショーにサヤカさんが出てたんだよ」
と言ってしまった。

 サヤカが聞いていたら、

「あんた、なに私を見に来たみたいなこと言ってんのよっ。
 私が出てるの知らなかったでしょうがっ」
と文句を言ってきたことだろうが。

「元気そうだったよ」
とそこだけは本当に嬉しく、付け加えたが、母は、

「サヤカちゃん、普通の可愛いお嫁さんになりたいって言ってなかった?」
と言ってくる。

 万千湖は、ははは、と笑い、
「司会とかやってても、別に普通になれるよ、お嫁さん」
と言って、電話を切った。

 ……自分達が仕事を辞めても、みんなをグイグイ引っ張ってくれてたサヤカだけは続けると思っていたのに。

 万千湖は七福神に向かって手を合わせる。

「サヤカさんに、より良い未来が訪れますように」

 ついでに、宝くじも当たりますように。

 宝くじのことを置き場に困る大金、と言っていたが。

 玄関に置くといいらしい七福神の前に置いてしまったので、ものすごい目立つ位置になってしまった。

 泥棒が入って、

 お、入ってすぐのところにいいものが、ってこれだけ持ってちゃったりしたらどうしよう、と心配になる。

「当たらない宝くじ持って逃げられるだけで済むのならいいじゃない」
と瑠美なら言ってきそうだったが。

 ……しかし、七福神様に三つも願ってしまったな。

 祈りすぎかな?

 家が当たりますように。
 サヤカさんが幸せになりますように。
 宝くじが当たりますように。

 でも、七福神を拝むと、七難即滅しちなんそくめつ七福即生しちふくそくしょう

 七つの災いをとりのぞき、七つの福を与えるとかいう話もあることだし。

 七つ願ってもいいのかも、と勝手に決め、残り四つを願おうとする。

 えーと……

 あ、この七福神様を買ってくれた課長に幸せが訪れますように、と、

「……俺は四つ目か」
と愚痴られそうな位置で願う。

 あと三つ。

 あと三つ……?

 別にないな。

 ああ、このままダラダラ過ごせますように。

 現状に非常に満足している万千湖はそう思い、手を合わせた。


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