OL 万千湖さんのささやかなる野望

菱沼あゆ

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ささやかなる弁当

三回デートするんじゃなかったのか

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 その頃、駿佑はあることが気になっていた。

 次の約束をしていなかったことだ。

 三回デートするんじゃなかったのか、白雪。

 いや、こっちから誘えば嫌とは言うまい。

 あれで義理堅い女だから、部長のために、あと二回はデートしようとするだろう。

 いや、別に白雪とデートしたいわけではないのだが……。

 部長のため。

 そう、なにもかも部長のためなのだ、と部長に、

「え?
 そんなに崇拝してくれてたっけ? 小鳥遊くん」
と言われそうなことを思う。

 とりあえず、
『当選発表のラジオ、いっしょに聞くか?』
とメッセージを送ってみようと思った。

 だが、その手を止める。

 うちにもラジオあるから大丈夫です、とか言ってきそうだな。

 当選発表は別々に聞いても問題ないし。

 家が当たった場合は、そういうわけにはいかないだろうが。

 ……当たるだろうか、家。

 そんなことを考えながら、スマホを置いて、風呂に入り、戻ってくると、あっさり万千湖からメッセージが届いていた。

「ラジオの当選発表、ドキドキするので、いっしょに聞きませんか?」

 超能力者か、白雪っ。
 何故、俺と同じことを考えているっ。

 いや、俺は別に発表自体はドキドキしないんだが。

 そう思いながら、すぐに返信しかけて、いや、待てよ、と思う。

 あまりに早く返信するのも、ずっと待ってたみたいで嫌だな。

 駿佑は一旦、スマホを置いて、意味もなく冷蔵庫まで行ってみた。

 それに、男として、女性に誘われるのを待っているというのがそもそもな。

 白雪のメッセージは見なかったことにして、自分から誘ってみるとか?

 いやいや、何故、俺があいつのために、そこまでいろいろ考えなきゃならん。

 駿佑は開けかけた冷蔵庫を閉め、テーブルに置いていたスマホをとった。

「そうだな」
と送る。

「よかったです」
とすぐに返ってきた。

 ……相変わらず、短いな。

 よかったからなんなんだ、と自分のメッセージの短さを棚に上げ、思っていると、
「ところで、ラジオってスマホで聞けるんでしたっけ?」
と入ってきた。

「聞けるんじゃないか?」

「何処で聞きましょうか?」

「車でも聞けるぞ」

「あ、じゃあ、車で聞きますか?
 何処か景色のいいとことか。

 それか、おいしいレストランの駐車場で聞きますか?
 当たったらお祝いできるし。

 外れても、目の前においしいものがあると思ったら気分、なごみますよね」

 長文打てるんじゃないか、と思ったとき、続けて入ってきた。

「でも、課長にいつも車出してもらっては悪いので、私が出しましょうか?」

「お前、車持ってたのか?」

「六万円で買ってきます」

 何処からっ?

「ラジオ、ついてるといいんですが」

 大根買うように買うなっ、と瑠美と同じことを思いながら、
「いい。
 車は俺が出す」
と返事する。

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