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ささやかなる弁当
また、バッタリ出会ってしまいました
しおりを挟むここにしようか、と行ってみた新しい焼肉屋さんは満席だった。
かなりの人が待っている。
「しまった。
予約してくるべきだったな。
昼間なのに、こんなに肉を食いたい奴がいるとは……」
我々もですよ、とそんな駿佑の言葉に万千湖は思う。
「どうする? 待つか」
「よそ行っても同じかもしれないですもんね」
受付の機械を操作していると、誰かが声をかけてきた。
「マッ……
こんにちはっ」
いつか回転寿司で見たカップルが後ろに立っていた。
船田たちだ。
何故、食べ物屋でばかり出会うのだろう……。
「あの、もうバレてるからいいよ、船田くん」
と万千湖が声をかけると、船田は、
「名前を覚えてくださってたんですねっ」
と感激する。
「マチカちゃん。
僕たち、今度結婚するんですっ」
と船田が照れながら、報告してくれた。
「マチカちゃんが僕らに呪いをかけてくれたからです。
最後、『みんな幸せになってね』って、マチカちゃん、言ったじゃないですか」
マチカに幸せにならねばならない呪いをかけられたのだと船田は言う。
「みんなもいろいろ頑張ってますよ、マチカちゃん」
と言われて、ちょっと泣きそうになる。
親にちょっぴり莫迦にされながらやっていたアイドル活動。
無駄ではなかったのかな?
ちょっとは誰かの役に立ててたのかな? とようやく思えた。
「そういえば、景太郎も結婚するって……。
ああ、景太郎知ってましたっけ?
僕は解散後にネットで知り合って話すようになったんですけど。
あいつも、今でもマチカちゃんの大ファンなんですよっ」
……もしやそれ、部長の息子さんでは。
万千湖は船田と船田の彼女と握手をし。
近くにいたおばちゃんたちにも、
「なんだかわからないけど、ついでに握手して」
と言われ、握手した。
「ありがとう。
応援するわね~」
とおばちゃんたちに微笑まれ、
「え、え~と……。
もう解散してしまったんですけど。
でも、ありがとうございます」
と万千湖はみんなに頭を下げた。
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