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何故か、ここにもケダモノがいます
ああ、例の人事預かりの……
しおりを挟むやっと昼休みだ……。
明日実は、ほっと一息ついて、近くの部署の同期と社食に向かう。
しかし、その社食も初めてなので、緊張してしまうのだが。
「明日実、いいなあ。
天野部長、格好いいよね~」
と一緒に歩きながら、竹内智子が言う。
彼女は中肉中背で、ショートカットなのだが、その髪型と背格好が、妄想の中の顕人の恋人とそっくりで。
つい、思い出してしまうのだが、彼女自身は気さくでいい人だった。
「でも、怖いよ」
と言うと、
「あ、怖いんだ、やっぱり」
と智子が苦笑いして言う。
「やっぱり?」
「笑顔で怖いって聞いた」
やはり、とり繕い切れないなにかが滲み出してるんだろうな、と思った。
さっきも、一度説明を受けた箇所がわからなくて、もう一度確認したら、笑顔だったが、ものすごーく冷たい空気が漂っていた。
猫をかぶっても、虎は虎。
所詮、ケダモノだからな、と思いながら、社食に行くと、美典たちも居て、ほっとした。
同期の人数も結構居るので、別れてそれぞれのテーブルで食べていると、
「あ、此処、新人の可愛い子がいっぱい。
一緒していい?」
と明るい色の髪の男の人がトレーを手にやってきた。
「あ、どうぞー」
と美典が愛想良く応対している。
「俺、横田大和。
営業だよ」
あー、なるほど。
営業っぽい、人当たりの良いイケメンだな、と眺める。
大和は隣に居た背が高くて、大人しそうな人を
「こいつは、笹原。
システムに居るよ。
コンピュータ関係で困ったら、なんでも訊くといいよ。
無愛想だけど、仕事は丁寧だから」
と紹介してくれた。
笹原は、黙って、ぺこりと頭を下げる。
美典が、
「初めましてー。
私、古村美典です。
美しく典雅な子と書いて、美典ですー」
と言って、自分で言うな、とみんなに突っ込まれ、笑われていた。
「いやいや、お美しいですよー」
と大和が大仰に頷いてみせる。
「こっちのお嬢さんは?」
と大和は明日実の前に座りながら訊いてきた。
「あ、はい。
佐野明日実です」
よろしくお願いします、と頭を下げる。
「ああ!
例の人事預かりの」
例のってなにーっ? と思ったのだが、貴継が言っていた通りに、
『君が、何処の部署に持って行けばいいのかわからない困ったちゃんだねっ』
と愛想よく返されても困るので、黙っていた。
そのとき、
「此処、いい?」
と後ろから声が聞こえた。
よく響くいい声だ。
振り返るまでもなく、智子たちから、いやーっ、天野部長ーっ、と歓声が上がる。
さっき、実は怖い天野部長とか言ってたくせに~、と明日実は、そのはしゃぎようを恨めしく眺めた。
「どうぞ、どうぞ」
と言う美典たちは、笹原を押し退けかねない勢いだ。
大和が振り返り言う。
「なんだ。
珍しいですね、天野部長。
社食で食べるなんて。
お口に合わないんじゃないですか?」
気のせいだろうか。
愛想のいい横田さんの口調がちょっと攻撃的なような、と思ったのだが、貴継はまったく動じず、
「いやいや。
たまには庶民の食べるものを口にするのもいいかと思って」
と冗談のように言い、みんなを笑わせていた。
ひい。
食事中にまで来ないでください、と思ったのだが、貴継は笑顔のまま、
「笹原、大和。
ひとつずつずれろ」
と言い、明日実の前を空けさせる。
「おのれ、暴君め……」
と大和は呟いている。
やはり、暴君なのか。
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