ケダモノ、148円ナリ

菱沼あゆ

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何故か、ここにもケダモノがいます

追い出されたんだ

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 貴継はそんな大和を無視し、さっさと明日実の前に座ると、
「佐野くん、少しは仕事内容が理解できたかな」
と訊いてくる。

「はあ、まあ、ぼちぼちです」
と適当に答えていると、大和が、

「さっき来たばっかりで理解できるわけねえだろ」
と貴継に向かい、言った。

 貴継が笑顔のまま言う。

「大和、此処は会社だ」

「はいはい。
 人事部長様っ。

 どうもすみませんねえっ」

 こちらを見て、
「こいつ、……この部長様は、大学の後輩なんだよねえ」
と渋い顔で大和が言い出す。

「後輩……」

「それは微妙ですね」
とみんな苦笑いしていたが、大和は、

「いや、昔から、こういう横柄な奴だったから、特に態度は変わりないかな」
と言う。

 貴方、大学のときから、この有様だったのですか、と思ったのだが、はははは、と貴継は笑っている。

 どういう意味で笑っているのか、考えるのも怖い。

「お前、この間貸したDVD返せよ」
と大和に言われた貴継は、ああ、とようやく思い出したように言い、

「そういえば、多香子たかこのところに忘れてきたな」
と言う。

「忘れてきたって?」
と大和が見る。

「追い出されたんだ。
 今は他の……

 ……他のマンションに居る」

 今、他の女のところに居る、と言いかけましたね……。

 ところで、多香子って誰ですか。

 追い出されたってことは、昨日のゴージャスな美女が多香子さんだろうか? とつい、正面の貴継を凝視していると、美典たちが、

「誰ですか? 多香子さんって。
 彼女ですか?」
と突っ込んでくる。

 今日会った部長サマに強引だな~、といつもなら思うところだが、今は、お願いっ、訊いてっ! と思っていた。

 貴継が、一瞬、ちら、とこちらを見、
「多香子は……」
と言いかけると、

「多香子さんは、こいつの姉さんだよ」
と大和が親指で貴継を指差し言った。

 ……は?

 姉さん?

「あいつ、男が出来て。
 結婚するんだそうだ。

 追い出されたよ」

「だから、爽やかそうな笑顔で声が怖ええよ」
と大和が言っている。

 なんだ。
 お姉さんの家を追い出されたんだったのか……。

「でもそうかー。
 多香子さん結婚しちゃうのかー。

 残念。

 お前に似ていることだけが欠点の、申し分ない美女だったのに。

 で、どんな相手?」
と訊かれた貴継は吐き捨てるように言う。

「どんなもこんなもない。
 多香子は金に目が眩んだだけだ」

 はいはい、と大和は笑っている。

「まあ、多香子さん、お嬢様だからなあ。
 俺なんかじゃ養えないよな」
と溜息をついた大和を、貴継は、

「それ以前に釣り合ってないがな、いろいろと」
と切り捨てる。

「だから、お前。
 俺、先輩なんだってば、部長サマッ!」
と大和が言い、みんな笑っていた。


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