13 / 73
何故か、ここにもケダモノがいます
妄想は落ち着いたか
しおりを挟む「初出勤、お疲れー」
研修期間なので定時に終わった明日実がエレベーターを降りると、ちょうどロビーに大和たちが居た。
「今日、呑みに行くんだけど、明日実ちゃんもどう?」
社会人になっての初めての呑み会だっ、とは思ったのだが。
「いえ、今日はもうボロボロなので。
帰って寝ます」
と言うと、はは、そうだねー、と言ってくれた。
「俺も最初はそうだったよ。
すぐ慣れるよ、お疲れー」
笑って手を振る大和に、お疲れさまです、と頭を下げると、大和の横に居た笹原もぺこりと下げてくれた。
外に出ると、まるで見計らっていたようにスマホが鳴り出した。
「お疲れさまですー」
貴継だ。
『そのまま帰るなよ』
と第一声で脅してくるので、ど、何処かで聞いていたのだろうか、今の会話っ、と怯えて周囲を見回す。
『この産業スパイがっ』
というあのおじさんのセリフを思い出していた。
スパイなんだから、なんかすごい盗聴器で私の会話を仕事しながら聞いてるとか。
ビルの上から、私を狙ってるとか。
……そりゃ、スナイパーか。
まあ、そもそも、一新入社員を盗聴したり、狙ったりする理由は、産業スパイにはないのだが。
『妄想は落ち着いたか』
何故わかったんだ、というタイミングで貴継が言ってきた。
『いや、いきなり帰るなと言ったら、お前のことだ。
またいろいろ考えてるんだろうと思ってな』
と解説までしてくれる。
『単に疲れてて、帰りたそうに見えたから、言っただけだ。
おかしなところに頭を回してないで、仕事に使え』
は……はーい、と言ったあとで、
「でも、今日はほんとに帰らせてください~。
もうボロボロなんですー」
とスマホ越しに訴えながら、駅へと歩く。
『まだボロボロになるほど働かせてないぞ』
「いや、緊張して、気を使って、ボロボロなんですよ~」
そう言いはしたが、また、貴継がソファで寝たりしたら、可哀想かな、とも思っていた。
「わかりました。
やっぱり、付き合います。
何処で待ってましょうか?」
と言ったのだが、
『いい。
わかった。
帰ろう』
と今度は貴継の方が言い出した。
「ええっ。
ついて行くって言ってるのに、へそ曲がりですねー。
反抗期ですか?」
とりあえず、言ったことの反対を言われているような気がして、つい、そう言ってしまったのだが、
『誰がだ』
と電話越しに威嚇される。
『疲れたのなら、その辺で待っとけ。
車で連れて帰ってやる』
「え、いいですよ」
『何処かで食べて帰るか?』
「うーん。
どっちかって言うと帰って食べたいです」
とついでに甘えて言ってみると、わかった、と貴継は言った。
『なにか買って帰ろう。
明日は同期会で、遅くなるだろうしな。
ともかく、その辺の店で待っとけ』
と言われたので、すぐ近くのホームセンターで待ち合わせた。
3
あなたにおすすめの小説
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
溺愛のフリから2年後は。
橘しづき
恋愛
岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。
そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。
でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?
雨の日にやさぐれお姉さんを拾ったと思ったら胃袋も心も掴んでくるスーパーお姉さんだった
九戸政景
恋愛
新人小説家の由利美音は、ある日の夜に一人の女性を拾う。太刀川凛莉と名乗る女性との共同生活が始まる中、様々な出会いを果たしながら美音は自身の過去とも向き合っていく。
ソツのない彼氏とスキのない彼女
吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。
どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。
だけど…何故か気になってしまう。
気がつくと、彼女の姿を目で追っている。
***
社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。
爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。
そして、華やかな噂。
あまり得意なタイプではない。
どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
ひとつの秩序
水瀬 葵
恋愛
ずっと好きだった職場の先輩が、恋人と同棲を始めた。
その日から、南莉子の日常は少しずつ噛み合わなくなっていく。
昔からの男友達・加瀬透真は、気づけばやたら距離が近くて、優しいのか、図々しいのか、よく分からない。
好きな人が二人いるわけじゃない。
ただ、先輩には彼女がいて、友達は友達の顔をしなくなっていく。
戻れると思っていた関係が、いつの間にか戻れなくなっている。
これは、仕事も恋もちゃんとやりたいのに、だいたい空回りしている大人たちの、少し不器用なラブコメディ。
数合わせから始まる俺様の独占欲
日矩 凛太郎
恋愛
アラサーで仕事一筋、恋愛経験ほぼゼロの浅見結(あさみゆい)。
見た目は地味で控えめ、社内では「婚期遅れのお局」と陰口を叩かれながらも、仕事だけは誰にも負けないと自負していた。
そんな彼女が、ある日突然「合コンに来てよ!」と同僚の女性たちに誘われる。
正直乗り気ではなかったが、数合わせのためと割り切って参加することに。
しかし、その場で出会ったのは、俺様気質で圧倒的な存在感を放つイケメン男性。
彼は浅見をただの数合わせとしてではなく、特別な存在として猛烈にアプローチしてくる。
仕事と恋愛、どちらも慣れていない彼女が、戸惑いながらも少しずつ心を開いていく様子を描いた、アラサー女子のリアルな恋愛模様と成長の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる