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何故か、ここにもケダモノがいます
困った人だな
しおりを挟む「あれっ?
今日、土曜じゃないですか?」
「今、気づくなよ」
二人で作った朝食を食べながら、貴継が言う。
「ええーっ。
じゃあ、嫌がらせですかー?」
「俺ひとりが起きて仕事行くとか嫌だろう」
なんだ、そりゃ、と思っていると、
「そうだ。
お前も一緒に来るか」
と言ってくる。
「……私、研修中なんですが」
「感心な社員だな。
研修中なのに、休みも働こうだなんて。
早く仕事が覚えられていいぞ」
えーっ。
今日はゆっくりしようと思ってたのにーと思いながら、
「幼稚園や学校の入学式が、木曜とか金曜が多いのは、慣れない環境で疲れてるのを土日で癒すためだと聞きましたが」
と言うと、
「うちは幼稚園じゃない」
と言われた。
まあ、そりゃそうなんですけど……。
休日はゆったりして、ちょっと癒されたいな~とか思ったんですが、と思っていると、
「俺も昼までだから、何処か食べにでも行くか。
休みの日だから、いつもよりはラフな格好でいいぞ」
と言ってくる。
貴継の中ではもう決定事項のようだった。
それにしても、なんだか口調が……。
いやを許さないというか。
「あの……。
なにか機嫌悪いですか」
貴継はそんなこともわからないのかという顔で、
「お前がよその男に色目を使うからだろう」
と言ってくる。
「よその男って誰ですか?」
「稲本顕人に決まってるだろ」
「……いや、あの人、身内ですけど」
「でも、お前、あいつが好きなんだろう?
結婚すると聞かされたら、動揺して、通りすがりの俺を婚約者に仕立てるくらい」
「好きとか、よくわかりません。
私、今までおにいさまに頼り切りでしたし。
それなのに、おにいさまが結婚のことを黙ってらしたのも、なんだかショックで」
「ま、所詮、俺なんて、貴様扱いだからな」
この人、すねるとたち悪いな~、と思っていると、貴継はなにを思ったか、
「今日は休みだから、会社まで乗せてってやろうか」
と言い出した。
いや、こんな機嫌の悪い人に乗せて行ってもらうとか、ととりあえず、丁重に断った。
結局、駅まで乗せていってもらったのだが、やはり、なんとなく機嫌が悪い。
困った人だな~と思いながら、明日実は車を降りる。
「どうもありがとうございました」
と言ったのだが、いや、と素っ気ない口調で言うだけだ。
もう~、と思いながら、
「昨日うっかり可愛いとか思っちゃって失敗でした。
さようなら」
と言い捨て、ドアを閉めた。
「……えっ? おい。
明日実っ」
と車の中から声が聞こえたが、後ろから車が来たので、貴継は仕方なく、そのまま大きな道に戻っていったようだった。
それを見送り、ふう、と息をついていると、
「おはようゴザイマス~」
と後ろから遠慮がちな声がした。
振り向くと、あの女子高生たちがこちらをおそるおそる窺い見ている。
土曜だが、部活か模試でもあるのだろうか。
ついに挨拶されてしまいましたよ、と思いながら、
「お、おはようございます」
と返すと、何故か、きゃーっ、と楽しそうな歓声を上げ、行ってしまった。
な……なんなのかな?
なんだかわからないまま、苦笑いしながら、明日実は彼女たちを見送った。
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