ケダモノ、148円ナリ

菱沼あゆ

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何故か、ここにもケダモノがいます

水族館に行ったんですが

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 貴継の車は、少し離れた海の近くの水族館に向かった。

 白と青を基調にした大きな建物が鮮やかな昼の海に映えている。

 絵本の中のように美しい色彩の巨大な水槽を眺めながら、明日実は、なんだかこれ、デートみたいだな、と思っていた。

 そういえば、デートらしきデートはしたことないし、顕人おにいさまとこういうところに来るときは、大抵、他の親族も一緒だったし。

 楽しいけど、ちょっと緊張するかな、と思いながら、海底のドームを歩いているような通路を歩いていたとき、貴継が、
「ちょっとその先でカワウソを見てろ」
と言い出した。

 よく知ってるな。
 この先にカワウソが居るなんて。

 水族館の中って何処も迷いやすいのに。

 ……よく来るのかな。

 綺麗な女の人とかと、と想像したとき、姉だと聞かされたのに、あの遠目に見たゴージャスな美女が思い浮かんでしまう。

 この人には、ああいう人の方が似合うよな、と思っている間に、貴継は明日実をカワウソの前のベンチに置いて、居なくなってしまった。

 薄暗い中に、ひとり取り残され、明日実は、ぽつんとベンチに座っていた。

 目の前で子ども達がガラスに張り付き、カワウソを眺めている。

「かわいー」
と言うちっちゃな子ども達に笑う。

 こっちから見たら、君らも可愛いんだが、と思いながら。

 そのうち、貴継が戻ってきた。

 明日実の目の前に立ち、
「よし、誘拐されなかったな」
と言う。

「いや……子どもじゃないんですから」

「そろそろアシカのショーだ。
 行こう」
と明日実の手を引き、歩き出す。

「アシカ、可愛いですよね」
と笑って言ったのだが、貴継は前を見たまま、大真面目な顔で、

「そうだな」
と言っただけだった。
 


 楽しくアシカのショーを見たあとで、少し遅いお昼を食べていると、貴継が時計を何度か見始めた。

「よし、行くぞ、明日実」
と立ち上がる。

「え?
 もうですか?」

 お昼をずらしたのは、魚を見ながら食べられる席が空くのを待っていたからのようだったのだが。

 店内は空いているのに、食べ終わるとすぐに出ようと貴継は行ってきた。

「アシカのふれあいタイムを予約してるんだ」

「え、そうなんですか?」

「アシカを指名して、貸し切ってる。
 早くしろ」

 何故、アシカを……と思いながら、真剣な顔の貴継に突っ込めずに立ち上がる。


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