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ケダモノは、やはりケダモノでした
妻じゃありませんってばっ
しおりを挟む「もう~。
信じられないです~。
あんなデッカイベッドを。
しかも、お兄様のベッドを処分してしまって」
「お前のも捨てろと言ったのにな」
「私のは此処に元からあったのですから」
もう~、明日実はリビングで飛び跳ねる。
貴継の買ったベッドは大き過ぎて、一度分解しないと入らなかったのだ。
「危うく、窓から吊るさないといけないところでしたよ。
こんな高さじゃ、幾らかかったか」
「いいじゃないか。
お前、好きだろ。
車とか、クレーンとか」
「いやあの、はたらく車が好きなわけじゃないんですけど」
「自分の妻の名前は間違えないぞ」
そう言いながら、腰をつかんで抱き上げてくる。
子どもに高い高いをするように。
「妻じゃありませんってばっ」
と叫ぶが、聞いていない。
「だが、今日はずっと指輪やってたじゃないか」
「外すと文句言われるからですよ。
っていうか、もしや、これ、婚約指輪とか?」
と怯えて訊いてみると、
「これが婚約指輪とか、お前の親に失礼だし、顕人にも笑われるだろう?」
と言ってくる。
「そうですか?
私は結構気に入ってるんですけど」
これじゃ、いけませんか? と訊いてみた。
「貴継さんのお父様が勧めてくださったものですし」
と言うと、
「そうか。
じゃあ、お前はそれを婚約指輪だと思ってつけてるわけだな」
と言われてしまう。
「い、いえっ。
そういうわけではないんですけどっ。
実は、可愛いので、結構気に入っています。
だから、安いからといって、これではいけないと言うのはおかしいかと」
そう言うと、貴継は笑った。
でも、ちょっと嬉しかった。
安い指輪では、両親に対して申し訳ないと言ってくれたことが。
きちんと親のことまで考えてくれている気がしたからだ。
……だからと言って、このまま貴継と結婚したいというわけではないのだが。
「本当に可愛いな、明日実は。
よく今まで売れ残っててくれたな」
そう微笑みかけてくる貴継に、
「あの……そういう言われ方はちょっと不愉快なんですが」
と訴える。
「それを言うなら、貴継さんは、何故、今までおひとりだったんですか?
あ、誰かお相手がいらっしゃったんですか?」
「お相手がいらっしゃったのに、お前にこんなことしてたら、大問題だろう」
まあ、それはそうか、と思っていると、貴継は明日実を膝に抱えて座り、
「誰か居たらどうする?」
と訊いてくる。
「別れます。
あ、忘れますって、付き合ってるわけじゃないですけど。
出て行ってもらいます。
そんな不誠実な人は嫌ですから」
と言うと、
「不誠実とかそういう問題じゃないんじゃないのか?
俺に、お前の前に誰か居たら嫌なんだろう?」
と機嫌良く言ってくる。
「本当に違いますってばっ。
私、もうお風呂入って寝ますっ。
明日も研修ですからっ」
頑張りますっ、と言うと、
「それはいい心がけだな。
……職場では、もちろん、容赦はしないからな」
と突然、部長の顔で言ってくる。
ひいっ、と逃げるように脱衣場に駆け込んだ。
「明日実……?」
明日実のあと、貴継が風呂から出ると、明日実の部屋は、本当に真っ暗だった。
もう寝たのか。
今度居ない間に、このベッド捨てといてやろう。
そしたら、俺と寝るしかなくなるからな、とほくそ笑みながら、ベッドに腰掛け、すやすやと眠っている明日実を眺める。
今日は疲れていたのか、外しそびれたらしく、イルカのリングは指につけたままだった。
ちょっと笑う。
……だが、気に入らんな、と思った。
明日実が右の薬指にはめているその指輪を左の薬指にはめ直す。
手をつかまれたせいか、明日実が寝返りを打った。
おっと、と思ったが、そのまま寝ている。
あどけないその寝顔を覗き込んだ。
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…………………………………………………………………寝かしといてやるか。
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