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ケダモノが膝を抱えています
で、どういう関係なの?
しおりを挟む結局、リビングで三人が酒を呑んだ。
「で、どういう馴れ初めで一緒になったわけ」
と貴継に訊く鏡花に、横から明日実は、
「まだなってません」
と往生際悪く言う。
「その人はただのケダモノですっ」
「おい、ケダモノ女、芸をやれ」
いや、ケダモノなのは、私ではないのですが、と思いながら、逆らうのもめんどくさいので、明日実は、お財布から、30円を取り出した。
「この10円玉が今から、3枚になります。
はいっ」
とやってみせる。
「お前……既に最初から3枚あるが。
っていうか、値段下がってるじゃないか」
既に酔ってるな、と言われてしまう。
なんでだろうな、と思っていた。
たいして呑んではいないのに、お酒が回って来た。
なんだか、ほっとしたからだろうか。
貴継さんの声を聞いて。
姿を見て。
明日実は側に座る貴継の腕に額をぶつける。
……貴継さんの熱を感じて。
「あら、明日実、もう寝たの?
面白くないわ」
という鏡花の声が聞こえてきた。
「で? どういう馴れ初めで出会って、どういう関係なの?」
眠ってしまった明日実を貴継が自分の膝に寝かせていると、鏡花が毛布を持ってきながら訊いてきた。
「いや、単に俺が明日実に一目惚れして、家に押しかけて住んでいるというだけの話だ」
「さらっと言ったけど、それ、犯罪スレスレね」
と鏡花は笑う。
明日実の従姉だというが、雰囲気はまるで違っていた。
「このお堅い明日実がよくそんなこと許したわね」
「顕人にフラれた直後だったんだ」
ああ、とグラスに口をつけながら、鏡花は言う。
「フラれたっていうかね。
どうなのかしらね。
顕人は、それでもって、明日実に止めて欲しかったんじゃないかしら。
そんなこと言える子じゃないってわかってたでしょうにね。
それにたぶん……
明日実が顕人を好きって言うのは、そういう意味でじゃないと思うんだけど。
ヒナが自分が親だと思ったものに付いて歩いてるのと一緒よ。
一種の刷り込みみたいなものでしょ」
まあ、貴方はわかってるでしょうけど、と言われ、膝の明日実を見下ろしながら、
「わかってるっていうか。
そうであって欲しいと願っているというか。
明日実にはそう思い込むよう、日々、洗脳をかけているが」
と言うと、多少呆れながらも、
「……ま、明日実には、貴方みたいな方が合ってるわよね」
と鏡花は言ってきた。
「ついでに言っとくと、今日は来ない方がよかったわよ」
どうしてだ? と言うと、
「いつもべったり一緒なんでしょ。
明日実はなにも言わなくても貴方が居てくれると思ってるわよ。
少しは寂しがらせなきゃ。
意外と駆け引き苦手なのね。
その顔で遊んでないってこともないでしょうに」
と言われる。
「いや、そういうのは苦手だな。
駆け引きしたいような女には出会わなかったし。
……明日実にはそんなことしたくない。
ま、しないとは言わないが」
と素直に認めたあとで、明日実を見下ろし、
「単に俺が嫌なんだよ。
明日実と離れてるのが……」
と言うと、鏡花は肩をすくめ、
「あら、意外と一途なのね」
と妙に感心したように言っていた。
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