60 / 73
ケダモノが膝を抱えています
明日実、結婚してくれ
しおりを挟む「よく見ろ、明日実。
これがお前の慕ってきた、おにいさまの本性だ。
俺よりもっとタチが悪いぞ。
お前が血を分けた妹だと知っているのに」
「よく考えたら、親の代の不始末を俺たちが背負うことはない。
明日実は俺の従妹だ。
そう思って生きてきたんだ。
鏡花も言っていた。
そんなことで怯むことはないと」
ひーっ。
鏡花さーんーっ。
「明日実、結婚してくれ」
といつ取って来たのか、部屋に置きっぱなしになっていた指輪の箱を開け、顕人は明日実に向かい、突き出してきた。
「結婚してくれっ、明日実。
この指輪は、ほんとは俺の年収と同じ金額だっ」
お、おにいさまの年収って幾らですかっ。
千万単位だった気がするが。
だが、貴継はその手を払って言った。
「帰れ、顕人。
それか明日実の部屋で……いや、明日実のベッドは貸さん。
ソファでおとなしく寝ろ。
俺は、明日実も会社も手に入れる。
貴継の継ぐは、会社を継ぐために祖父が入れた字だっ」
こちらを見下ろし、
「そして、明日実の明日は、明日、俺の花嫁になるようにだ」
と言ってきた。
「今日はお前に邪魔されそうだからな」
「なに勝手に私の名前を命名してるんですかっ」
と言いながら、やっぱりこの人やさしいなとは思っていた。
今日、傷ついている顕人を叩き出す気も、動揺している自分を手篭めにする気もないようだ。
その甘さが命取りにならないといいんだが、と仕事の心配をしながらも、とりあえず、反抗すべきところは反抗しておく。
「適当なこと言わないでくださいっ。
私の名前は、明日、実がなるようにで、明日実ですっ」
顕人が居るのに、貴継はベッドで片膝をつき、手首をつかんできた。
「なにが明日、実がなるようにだ。
何故、今日ならんっ」
ま、まあ、それは確かに。
何故なのですか、おかあさま、おとうさま、と思っていると、顕人が、
「その名前は俺の父親が考えて、お前の母親がつけたんだ」
と言い出す。
だから、そんな爆弾発言は今いりませんから、おにいさま~っ、と思っている前で、貴継はなおも言い募る。
「なにが明日実だっ。
俺と結婚しない限り、明日もあさっても実はならないっ。
お前の人生に俺という花が咲かないからだっ!」
待ってください。
何故、貴方が花になるのですか。
私が花ではないのですか。
それに張り合うように顕人が言う。
「俺は顕人だ!
特になにも意味はないっ」
もうなにがなんだかわからないんですが……と思いながら、明日実は、呆然と二人を見ていた。
4
あなたにおすすめの小説
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
溺愛のフリから2年後は。
橘しづき
恋愛
岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。
そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。
でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?
雨の日にやさぐれお姉さんを拾ったと思ったら胃袋も心も掴んでくるスーパーお姉さんだった
九戸政景
恋愛
新人小説家の由利美音は、ある日の夜に一人の女性を拾う。太刀川凛莉と名乗る女性との共同生活が始まる中、様々な出会いを果たしながら美音は自身の過去とも向き合っていく。
ソツのない彼氏とスキのない彼女
吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。
どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。
だけど…何故か気になってしまう。
気がつくと、彼女の姿を目で追っている。
***
社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。
爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。
そして、華やかな噂。
あまり得意なタイプではない。
どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
ひとつの秩序
水瀬 葵
恋愛
ずっと好きだった職場の先輩が、恋人と同棲を始めた。
その日から、南莉子の日常は少しずつ噛み合わなくなっていく。
昔からの男友達・加瀬透真は、気づけばやたら距離が近くて、優しいのか、図々しいのか、よく分からない。
好きな人が二人いるわけじゃない。
ただ、先輩には彼女がいて、友達は友達の顔をしなくなっていく。
戻れると思っていた関係が、いつの間にか戻れなくなっている。
これは、仕事も恋もちゃんとやりたいのに、だいたい空回りしている大人たちの、少し不器用なラブコメディ。
数合わせから始まる俺様の独占欲
日矩 凛太郎
恋愛
アラサーで仕事一筋、恋愛経験ほぼゼロの浅見結(あさみゆい)。
見た目は地味で控えめ、社内では「婚期遅れのお局」と陰口を叩かれながらも、仕事だけは誰にも負けないと自負していた。
そんな彼女が、ある日突然「合コンに来てよ!」と同僚の女性たちに誘われる。
正直乗り気ではなかったが、数合わせのためと割り切って参加することに。
しかし、その場で出会ったのは、俺様気質で圧倒的な存在感を放つイケメン男性。
彼は浅見をただの数合わせとしてではなく、特別な存在として猛烈にアプローチしてくる。
仕事と恋愛、どちらも慣れていない彼女が、戸惑いながらも少しずつ心を開いていく様子を描いた、アラサー女子のリアルな恋愛模様と成長の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる