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ケダモノが膝を抱えています
こんな朝早くに、一体、誰が……?
しおりを挟む早朝、玄関のチャイムが鳴って、明日実たちは目を覚ました。
「は、はい?」
と明日実が出ようとすると、貴継が止める。
「待て。
こんな朝早くに誰が来るんだ?」
なにか気になるじゃないか、俺が出る、と言う。
「新聞屋さんかもしれません」
「なにしに」
「……新聞入れ間違えたから返してください、とか?」
阿呆か、と言いながら、顕人と手がつながれたまま、貴継はインターフォンを確認に行った。
「知らない女だな」
え? と明日実もそちらを見に行く。
「……この方、おにいさまの婚約者の方じゃないですか?」
明日実のその言葉に、貴継に引きずられながらも、塞いでいるかのように俯きがちだった顕人が顔を上げた。
「お前、会ったことあるのか」
と問う貴継に、
「いえ、ショートカットなので、なんとなく……」
と答えると、そりゃ、お前の妄想の中での話だろ、という顔をする。
顕人が二人の隙間からカメラの映像を確認した。
「真冬」
「寒そうな名前だな」
「やはり、毛皮でもふもふの国の人なのでしょうか」
「後ろにピラミッドがあるんじゃなかったのか」
この人も真冬に産まれたから真冬よ、とよくわからない主張を始めるのだろうか、とかしょうもないことを思っていたが、貴継が勝手に、
「今、鍵を開ける。
入れ」
と顕人の意志も訊かずに言ってしまう。
「回収に来てくれたのなら、ちょうどよかったじゃないか」
とそれこそ、新聞かなにかのように言い、顕人とつながったまま、ドアに行く。
顕人は嫌そうだったが、そのまま連れられていった。
ドアを開けると、ショートカットで気の強そうな顔をした女が見えた。
貴継を見て少し驚いた気がする。
「此処は従妹の明日実さんの部屋では?」
「俺は明日実の婚約者だ。
よく此処がわかったな」
「鏡花さんに聞いたの」
と言った真冬はチラと貴継の後ろの顕人を見、
「婚約者も居るのに、こんなところまで来て、莫迦じゃないの?
……っていうか、それ、どんなプレイ?」
とネクタイでつながれた男二人の手を見る。
「まあいい入れ。
お茶でも淹れよう。
飲んだら、とっととこの男を連れて帰れ」
「いや、別にいらないけど……」
と視線をそらし気味に真冬は言っていたが、その薬指には、立派な指輪がはまっていた。
「鏡花さんに聞いたわ。
明日実さんは貴方の妹だそうじゃないの」
毛布を片付けたリビンクのソファに座るなり、真冬は言い出した。
その前のラグに顕人は正座させられ、ぐずぐずとなにか言っている。
「……まだ確かめたわけじゃ」
「でも、その確率が高いから諦めようとしてたんでしょ」
と真冬は冷たく言い放つ。
ひとつ溜息をつき、真冬は言った。
「私も貴方のことはそんなに好きじゃない。
でも、貴方との結婚はこのまま進めてみようと思うの」
顕人が惑いながらも、顔を上げる。
「やっぱり、破談にされたら困るわ。
私の名前に傷がつくもの」
ねえ、とお茶を運んできた明日実を見て真冬は言う。
同じ女として、同意を求めてきたのだろうが、どうも頷きづらいな、と思っていた。
おにいさまはしょげかえってらっしゃるし、と同情的に美人教師に叱られている男子高校生のような顕人を見る。
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