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ケダモノが膝を抱えています
明日のお楽しみですよ
しおりを挟むイタイノ イタイノ
トンデイケ
そのあとの週末は静かに過ぎた。
二人でお買い物に行ったり、カウンタックでドライブしたり、クレームブリュレを作ったり。
日曜の夕方、ソファに寝て本を読んでいた貴継が訊いてきた。
「明日の入社式の準備は出来たか、明日実」
「はい。
ばっちりです」
貴継の前のテーブルで、貴継の作ってくれたクレームブリュレを食べながら言うと、
「そうか、ちょっと着てみろ」
と言って笑い、スーツを着させようとする。
「駄目です。
当日のお楽しみです」
「そういうこと言うと、期待するぞ」
と言われ、
「……すみません。
いつも着てるのとそう変わらないスーツです」
と俯いた。
「そうか。
安心したぞ」
と貴継は本を置いて言う。
「ノースリーブだったり、もふもふだったり、とんでもないのを着てくるつもりかと思った」
「そんなわけないじゃないですかっ」
そう言い、ソファで頬杖をついている貴継の腕を叩くと、貴継は笑ってこちらを見る。
その表情が初めて会った頃とは全然違っていて、穏やかで、やさしげに見え、思わず、視線をそらしてしまった。
どうしたらいいんでしょう。
なんだか貴継さんの顔が見られません。
息苦しいような。
そんな感じもするけれど。
ずっとこうして居たいような。
貴継の居る休日に、もう違和感はない。
そんなに長く一緒に居たわけでもないのに。
これが相性というものなのでしょうか、と思っていると、貴継の手が明日実の頬に触れてきた。
そのまま当たり前のようにキスしてくる。
そして、自分も当たり前のようにそれを受けていた。
「明日実」
と貴継が明日実の背に手をやり、抱き寄せたとき、貴継のスマホが鳴った。
「なんだもう。
どうもこういうとき、電話が入るな。
誰か見てんじゃないのか。
この部屋監視カメラとかあるんじゃないか?
……もしや、顕人か?」
と言いながら手を伸ばし、貴継はそれを取る。
仕事の電話だったら困るからだろう。
「おにいさま、貴継さんの番号、ご存知ないでしょう?」
と言うと、
「いや、あの男は知ってそうだ」
と言いながら、着信を確認する。
「……親父じゃないか」
えっ?
お父様?
「キャンディさんが危篤だとか、遠くの水族館に送られるとか言うのでない限り怒るぞ」
と言いながらそれを取る。
お父様がじゃなくて、キャンディさんがですか?
と苦笑いする。
まあ、照れ隠しなんだろうな、と思っていると、
『貴継、今から来なさい』
と言う、調教しているときとは、全然違う声が漏れ聞こえてきた。
「なに命令して……」
『ちゃんとした格好をして来なさい。
明日実さんは連れてこないで。
……お前をかばって右往左往しそうだから』
貴継は黙り込む。
なにか、嫌な感じかするなと思っていた。
「わ、私も隠れてついていきます」
と言ったが、スマホを切った貴継に、頭をぽんぽんと叩かれる。
「いいから。
なにか食べて先に寝てろ。
もしかしたら、長くなるかもしれないから」
貴継は、一点を見て、なにか考えながら言ってくる。
心配だったが、ついていくべきではないと思ったので、おとなしく家で待つことにした。
貴継の父の声が耳から離れなかった。
あの人、本当にボンクラだったのかな、とふと思う。
貴継さんとそっくりな目をしたあの人が……。
貴継は何時になっても帰っては来ず、言われた通り、布団に入ったものの、眠ることはできなかった。
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