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大聖女のあかし
城の中のバザール
しおりを挟むお城の王様はおじいさんで、ニコニコと感じがよく、
「わしは最近は国の細かいことは、彼らに任せているんですよ。
好きなだけ、ここに滞在していってください」
と言われる。
「感じのいい王様ですね。
ああいう方が困っているのなら、助けてあげないといけない気がしますね」
まあ、困っているのは、彼らだけのような気もするが……、
とフェリシアは人のいい王様から、いろいろと丸投げされているらしい僧侶たちを見た。
「さあ、大聖女さま」
謁見のあと、導かれた城の中庭にはバザールのようなものが出来上がっていた。
「大聖女さま御一行さまだけの屋台です。
お好きなものをお好きなだけお召し上がりください」
なにもかも毒味もすんでおります、と僧侶たちは言う。
「えっ、申し訳ないです。
街のみなさんも一緒に――」
と言いかけたフェリシアに獣人が耳打ちしてくる。
「それをすると、訳のわからない輩が入り込んでくるかもしれないじゃないですか。
彼らがここに作った意味がなくなるので、遠慮なく楽しまれたらいいと思いますよ」
「そ、そうですね。
では、少しだけ……」
フェリシアは魔王たちとともに、屋台を見て回る。
足元のところどころ草の生えた石畳はひんやりしていたが、顔の辺りは屋台からの熱気がすごい。
薪で焼かれた熱々のソーセージは薪の香りとこの国独特のタレの香りが混ざって美味しそうだ。
「どうぞ、大聖女さま」
とソーセージを差し出される。
「あ、ありがとうございますっ」
お金はあとで僧侶たちが払ってくれるらしく、なにもかもタダだった。
熱いっ、いい香りっ、なんかいろいろ絶妙っ、とみんなで食べていると、少し奥の屋台からムタルが声をかけてきた。
「おっと、大聖女さまっ。
ご所望の肉を忘れちゃいけないぜっ」
最初は畏まっていたムタルもこの祭りのような高揚感にかなり陽気になっている。
「ありがとう。
これ、食べたかったのよ」
「大聖女さま、魔導師さま、皆様、こちらもどうぞっ」
「いや、ぜひ、この酒をっ」
みんなも我こそは食べていただこうっ、と盛り上がる。
あまりに楽しそうなので、と王様もついには外に出てきて。
王様も僧侶たちも一緒に楽しんだ。
フェリシアは酸味と甘味のちょうどよい女性向けのフルーツ酒を呑み、
この先の国でとれるという美しい石のブレスレットをみんなとお揃いで買った。
いや、買ったというか。
お金は払っていないのだが。
フェリシアはその細い手首にはまったブレスレットをぎゅっと握りしめて呟く。
「……こんなにもてなしていただくなんて、なにかして差し上げなければ」
「ああそうだな。
なにかしなければ」
と魔王も言う。
獣人も申し訳なさそうな顔をしていた。
スライムの男の子は駆け回っていたが。
「なにをしたらいいのでしょう?」
とフェリシアが困って問うと、
「なにかできないのか?
こう、聖女的ななにか」
と魔王が訊いてくる。
……聖女ではないので、無理かと思いますね。
「あっ、でも、そうだ。
城にいたとき、流しの妖精が来て」
「流しの妖精ってなんだ……」
と魔王に突っ込まれる。
「城で歓待したら、芸を見せてくれたんですけど。
そのときの水晶を持ってます」
フェリシアはゴソゴソと少ない荷物から、その水晶玉を出してきた。
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