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盗聴器が出てきました……
盗聴器ですっ!
しおりを挟む引越しの準備をしていて、盗聴器を見つけました。
「どうした、葉名」
部屋の隅にしゃがんでいた葉名に准が訊いてくる。
葉名の手には盗聴器のセンサーがあった。
学生時代の友だちに、陽ちゃんの部屋だから盗聴器があるかもーという話をなんとなくしたら、
「じゃあ、これ貸してあげるから探してみなよ~」
と言われたのだ。
そのセンサーが今、オレンジ色に光っている。
センサーは盗聴器の存在を告げていた。
側にやってきた准を振り向き、葉名は、しっ、と言う。
「盗聴器ですっ」
と抑えた声で告げた。
「……は?」
と言う准に、葉名は、もう一度、しっと言う。
無言でベッドの陰を指差した。
そこに、存在自体知らなかったコンセントがあり、白いコンセントタップが挿さっている。
……怪しすぎる。
葉名はそこにセンサーを近づけてみた。
オレンジだったセンサーが赤く光る。
盗聴器がすぐ近くにある印だ。
「……なんだって、こんなところに」
と葉名はベッドの陰にあるコンセントを見た。
たまたま引っ越しのためにベッドを動かして大掃除していたから発見できたが。
普段なら、センサーが反応しても、何処にあるのか見つけられないような場所だ。
リビングとか電話の側なら会話もよく聞こえるだろうに。
何故、こんな普段は人も居ないような片隅に、と思う葉名の頭の上から、そのコンセントを覗きながら准が言う。
「どうせ、陽子の前の彼氏が、浮気の確認のためにつけたんだろ?
じゃあ、ベッドの近くで正解じゃないか。
っていうか、なんで、小声だ」
「いえ。
我々が気づいたことを相手に気づかれるかと……」
「産業スパイとかじゃないんだ。
別に気づかれてもいいだろう」
と准は声を抑えることなく言ってきたが。
葉名は今、それとは違うことが気になっていた。
「……これ、ずっと此処にあったんですかね?」
「そうだろうな」
と軽く言った准は腕組みしたまま、盗聴器を見下ろし、
「俺たちのあんなことやこんなことも全部聞かれていただろうな」
と付け足してくる。
ひーっ、やめてくださいーっ、と葉名は耳を押さえ、しゃがんだまま小さく丸まった。
「別にいいだろ。
もう結婚してるんだし。
お前が俺の愛人とかだったら、ゆすられたりとかあるかもしれないが。
ああ、お幸せでいいことですねって言われるだけだ」
「……誰が言うんですか? それ。
盗聴している犯人がですか?」
と葉名が言ったとき、後ろから声がした。
「ねえ、なにサボってんの。
僕が一番やってるんだけど、掃除」
と花屋のエプロンをつけたままの誠二が掃除機を手に立っている。
「葉名さん、掃除機買い替えなよ。
こういう昔ながらの奴って、引っ張ると転がるからさ。
僕、もうめんどくさいから、さっきから、掃除機逆さまになったまま掃除機かけてるんだけど。
……って、なにしてんの?」
と誠二も一緒に覗き込んできた。
「とーちょーきですっ」
と小声で葉名は教える。
ふうん、と言った誠二は、
「僕、今、家出て一人暮らしなんだけどさ」
といきなり語り出した。
「夜中にさ、いきなり風呂から、ごぼごぼごぼって湯もないはずなのに聞こえてきてさ。
そのあと、オオオオオオオ……ッて、オッサンのうめき声みたいなのが聞こえてきたんだよ」
「どうしたんですか、急に」
「いや、嫌がらせに怪談を聞かせてやろうかと」
「……怖い話好きの人で、向こうで、ワクワクしてたらどうするんですか。
っていうか、こっちが気づいてるって気づかれちゃうじゃないですか」
「いや、気づかれてると思うけど、もう」
と誠二は言う。
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