ほんとうに、そこらで勘弁してくださいっ ~盗聴器が出てきました……~

菱沼あゆ

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盗聴器が出てきました……

洗脳されそうだ

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「私が今度結婚する准さんって人、素敵なの、とか言ってたりするのかな。

 それとも、強引でしつこいのよ。
 社長だから、断れないと思って、とか言ってるのかな」

「私がそんなこと言うわけないじゃないですか」
と言いながら、内心、

 強引だというところは当たっているんだが。
 自覚があったのか……と思っていた。

「お前が此処で友だちに俺のことを愚痴ってばかりいたのなら。
 俺たちの愛を疑っているかもしれんな」

「誰がですか」

「盗聴器の男だろう」

 ……別にいいんじゃないですかね? その人に疑われてても、と思う葉名に准は言った。

「言ってみろ、此処で。
 准さんが好きですって。

 聞いてもらえ」

 だから、誰にですか。

「ほら、言わないと、俺が強引にお前を自分のものにしたと勘違いしたままだぞ、この盗聴男。

 そういえば、まだ恥ずかしいのか、毎晩、抵抗して逃げ回るし。

 強姦魔だと思われているかもしれん。

 警察に通報されたら困るから、お前、此処で俺に愛を誓え」

 いや、盗聴してる時点で、警察に通報しないと思うんですけどね……。

「ほら、言え。
 『准さんが好きです』」

「じ、准さんが好きです」

 逆らうとうるさいので、素直に言ってみた。

「棒読みだな」

 文句が多いな。

「一生准さんが好きです」

「一生准さんが好きです」

「准さん以上に好みのタイプの人は居ません」

「准さん以上に好みのタイプの人は居ません」

 だんだん、なにかの合宿セミナーみたいになってきた……。

 行ってる間だけ、ポジティブになれたりする、会社とかで行かされるあれだ。

 洗脳されそうだ。

「なにか違うな」
と自分で言わせておいて、准は顎に手をやり、考える。

「わかった。
 准さんだ」

「はあ……」

「呼び捨てにしろ」

「ええっ、無理ですっ」

「なんでだ。
 お前は俺の妻だろうっ。

 はいっ、准、愛してるっ」

「それは無理です~っ」

「なんでだっ。
 陽子の前の彼氏の盗聴男に、俺たちの愛を疑われてもいいのかっ」

 別にいいです~っ、と思ったとき、誠二が宣言通り、ギターを手に帰ってきた。

「なに僕が居ない間に、二人でラブラブしてんのっ?

 嫌がらせに、お前の通帳の番号と暗証番号を読み上げてやる」
といきなり、誠二は盗聴器に向かい、銀行名と支店名、そして、数字をつらつらと言い始めた。

「お前っ。
 通帳の番号もだが、暗証番号、何処から手に入れたーっ」
と叫んだ准が誠二の肩をつかんで、盗聴器から離れさせようとする。

「いや……、だからもう外したらいいんじゃないですかね? 盗聴器」

 だがまあ、盗聴器のおかげで、楽しく一日を過ごせた。

 掃除は進まなかったが……。



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