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ゼロどころか、マイナスからの出発
社長、顔色、どす黒いですよ?
しおりを挟む次の日、青葉は大吾に連絡したが、携帯も通じなかった。
まだ呪いの村から帰ってないのか。
……呪われたのだろうか。
村人の呪いで通じないとか?
いや、今、あいつをもっとも呪っているのは俺なんだが。
自分の身代わりであかりに会いに行った、というとこまでは、うちの母親が面倒かけて申し訳ないと思う余地があったのだが。
なんで、お前の方があかりにぐいぐい押してってるっ!?
とか考えていたら、恋の予感にウキウキしている来斗がやってきた。
「おはようございますっ、社長っ」
「……元気そうだな」
「どうしたんですか、社長。
顔色、どす黒いですよ」
あかりに告白する前に、あかりと自分との間に子どもがいることが発覚し。
混乱しているところに、日向が、大吾を『父親』とか呼びはじめて……。
この状況で、頭が混乱しないやつがいるだろうか、いや、いない。
……だが、考えてみれば、一度は、あかりと恋仲だったわけだし。
そのことは嬉しくもある。
この先も可能性がないでもないでもないかも……と思いながら、明るい表情で説明しながら、封書を渡してくる来斗を見上げる。
なにか言おうかと思ったが。
そういや、こいつは、なんにも知らないんだったな、と気がついた。
なんかウキウキしてる奴を一緒に悩ませることもあるまい。
来斗にとっては、自分は上司で。
大吾は義理の兄になるかもしれない男だから、間に入っていろいろと困るだろうからな、と思う。
そのとき、呪われた大吾から電話がかかってきた。
「すまない。
今、電波の通じない洞の中にいた」
何処にいるんだ、お前は……。
「実は話が――」
「そうだ、青葉。
あかりは俺がもらうぞ」
まだなんにも言ってないがっ?
「そういう話でかけてきたんだろう?
あかりは俺がもらう。
お前よりは俺の方が好印象のはずだ」
いや、あかりに、お前は誰だっつったの、お前だからなーっ。
「お前はマイナスからの出発だろう」
それ、お前のせいでは!?
そして、その犯人のお前が何故、俺より心のいいポジションにいる!?
いや、あかりに確かめてみたわけではないのだが。
……少なくとも、過去を告白したとき、俺に向けたような。
死んだ魚のような目を、大吾には向けていないと思う。
「社長、どうかされましたか?」
大吾からの電話を切ると、来斗が心配そうに訊いてくる。
「いや、なんでもない」
青葉は話題をそらすように来斗に言った。
「そうだ、昨日、日向に会ったぞ」
そうですか、と言う来斗はニコニコしている。
日向が可愛くて仕方ない、という感じだった。
今までだったら、ここで、
「日向、可愛いな」
と言っていたところだが。
我が子だと分かった以上、それを言うのは、ただの親バカだ。
「……日向はなかなか面白いな」
という言い方を青葉はした。
「ありがとうございます。
そういえば、日向、最近、字を覚えまして」
「ほう」
「この間も、『すいかの「あ」』って言いながら、字を書いてくれたんですよ」
「……『かえるの「あ」』じゃなかったのか」
いや、どっちも間違ってるんだが、と思いながらも青葉は言った。
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