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ゼロどころか、マイナスからの出発
『行列のできる店』になりたい
しおりを挟む「楽しみだね、自動販売機」
朝、孔子とウキウキ語り合い、仕事に行こうとしたあかりに孔子が言った。
「あ、あかりさー。
結構、外国の、香りの強いお茶とかお菓子とか平気でしょ?
これ、あげる」
と茶色い紙袋を差し出してくる。
「誰かが出張のお土産にって買ってきたらしいんだけど。
みんな香りがきつすぎて駄目だったらしくて。
でも、捨てるには高いし、もったいないからって、いろんな人の手を渡ってって。
ついには、一周して戻って来たらしいよ」
「その話の流れを語りながらくれるのがすごいけど。
まあ、誰かそういうのが好きって人がいるかもしれないから、もらっとくよ。
ありがとう」
とあかりは紙袋を受け取り、バスに乗って、自分の店へと向かう。
窓の外に、開店前から行列になっているお菓子屋さんが見えた。
すごいなー、あんなに人が並んでるお店って。
いつか、うちもあんな風に……
って、そもそも、ランプ屋に行列並ばないか。
……限定福袋とかやったら、並んでくれるだろうか。
いや、ラーメン屋さんとかじゃないんだから、行列があった方が美味しそう、とかいうわけでもないけど。
でも、開店前から、お客さんが待っててくれるって嬉しいだろうな、と思いながら、ふふふ、と笑ったそのとき、何処かの店の前に人が並んでいるのが見えた。
何処かって……
うち!?
ともう通り過ぎた店の方を振り返る。
バス停で降り、慌てて店に行くと、開店前なのに人が並んでいる。
いや、二人なんだが……。
大吾と青葉だ。
あかりに気づいた二人は、よく似た顔、よく似た声で、
「おはよう」
と声をそろえて言う。
「あの……なんで並んでるんですか?
福袋やってないですよ」
とつい言って、
「福袋?」
と二人に訊き返された。
……すみません。
そこは私の妄想でしたね。
「いや、並んでいたのは、どっちが先に来たのか証明するためだ」
「お前、なんで俺より早いんだっ。
昨日からテント張って並んでたんじゃないのかっ」
と青葉が自分の前に立つ大吾に言う。
店の前にテント……。
この間の探検家みたいな格好を思い出し。
大吾さんならやりそうだな、とちょっと思った。
「うどんがいいな」
「俺はたこ焼き」
カウンターで珈琲を淹れているあかりの前で、二人がそんな話をしはじめる。
自動販売機の話だ。
「いやあのー、珈琲とか飲み物の自動販売機にしたいんですが」
「まあ、確かに、たこ焼きは匂いがな」
と大吾が青葉の意見にケチをつけ、
「うどんも出汁の香りが漂うだろうよ」
と青葉が大吾の意見にケチをつける。
だが、二人はそう言い合ったあとで、
「せっかく、店の雰囲気はいいんだから、なんかお洒落な物を売れよ」
と同時に言ってきた。
……なんなんだ、お洒落な自動販売機って。
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