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海里のろくでもない日常
愛妻弁当とは……
しおりを挟む出会ってから、ずっとプロポーズしている気がするんだが……。
なんで未だに結婚してないんだろうな?
そんなささやかな疑問を抱きながら、海里は支社長室の窓から、カフェのある方角を見ていた。
あまりは今日も元気にあの店で働いている。
成田と一緒に……。
いや、そんなに働きたいのなら、此処で働け、と思っているのだが、どうしてもあそこがいいらしい。
まあ、わからないでもないが。
あくせく働いていた(?)窃盗犯も改心させる、のんびり加減の店だからな。
「出前でーす」
とお昼になったら、あまりが現れた。
たまにはお昼を持っていってあげますよ、と言っていたのだが。
あまりが、
「はい」
とデスクに置いたのは、カフェのベーグルサンドや小洒落た容器に入ったお持ち帰り用のスープだった。
「……お前の手作り弁当じゃないのか」
と文句を言うと、
「今朝、そんな暇ありましたっけ?
一緒に出たのに」
と言ってくる。
毎日、ほとんど一緒に居る。
ずっとプロポーズしている気がするんだが、聞かないフリをされているのか、照れているのかよくわからない。
まさか、そのうち、俺よりいい男が現れるかもとか思ってるんじゃあるまいな。
この世に居ないぞ、あまり。
お前にとっての俺よりいい男は――。
自画自賛かもしれないが。
どのみち、大抵の男は、ちょっと可愛いからと思って付き合っても、あまりのマイペースっぷりについていけなくなると思うのだが。
妄想にはまって、いきなり落ち込んだりグレたりして、ぷるぷる震え始めるしな……。
この間ちょっと仕事がつんでて行かなかったら、廊下で出くわした服部が、
「あれっ?
また来てる。
もう別れたんじゃなかったんですか。
別れないんですか?」
と言ってきた。
仕事が忙しいせいかもしれないが、時間がないからと言って、ストレートに思ったことを訊いてくるのはやめろ……。
あまりもしばらく来ないから別れたとか思ってるんじゃないだろうなと不安になるから。
ラブラブ電話の向こうで、ぷるぷるしているのかもしれない。
電話の向こう、見えないからわからないしな、と思っていると、今、目の前に居るあまりは案の定、
「じゃ、失礼しまーす」
とさっさと帰ろうとする。
「お前は食べてかないのか?」
「忙しいんで、この時間」
じゃっ、とあっさり、陽気に出て行き、寺坂と少し話していた。
「楽しみですねー、社員旅行」
と言っているのが聞こえてきた。
そうだな。
楽しみにしているぞ、あまり。
いつもと違う状況なら、この膠着した状態も抜け出せるかもしれない。
海里は、密かに、今度の社員旅行に賭けていた。
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