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海里のろくでもない日常
酒は旅の必需品
しおりを挟む「新幹線ですっ」
結局、海里と二人、駅のホームに居たあまりは、力強くそう言った。
「いや……見ればわかる」
と入ってきた新幹線を見ながら、海里は言う。
いやいや。
最初に二人で乗ったときのことを思い出し、感極まって出た言葉だったのだが、かなり言葉足らずだったようだ。
みんなより出発は遅れたが、夕食の時間には間に合いそうだ。
なので、飢えたまま、新幹線ではなにも食べられない。
着いたらすぐ、夕食だからだ。
あまりの視線は、売店のお菓子を見ていた。
物欲しげなあまりに気づいたように海里が言う。
「……つまみと酒を少しくらいならいいんじゃないか?」
「えっ。
でも、せっかく、まかないも少ししか食べずに頑張ったのに」
と言って、どんだけ夕食楽しみにしてんだ、と言われてしまう。
「いや、だって、美味しかったですよね、あの宿のお食事」
と言うと、海里は、
「お前、先、乗ってろ」
と言って、売店に行ってしまった。
始発の電車なので、まだ余裕がある。
だが、海里が出てくるまで、あまりは売店の外で待っていた。
ビニール袋を手に出て来た海里が、
「どうした。
乗ってろと言ったろう」
と言ってくるが。
「いいえ。
万が一、なにかで手間取って、海里さんが乗れなかったらいけないので」
とあまりは言った。
「乗り遅れるときも、迷子になるときも一緒です」
と言うと、海里が笑う。
今日は自由席ではなく、指定席だった。
「じゃあ、一番、この旅を楽しみにしてたやつが窓際に座れ」
と言ってくるので、
「海里さんは楽しみじゃなかったんですか?」
と訊くと、
「いや……まあ、楽しみだが」
と何故か、気もそぞろに言ってくる。
なんだろうな? と思って、その横顔を見ていると、
「まあ、これでも呑め」
と海里は細い珈琲のボトル缶のようなものを出してきた。
よく見ると、お酒だ。
「へー。
こんなのもあるんですねー、最近。
子どもが間違えて呑んじゃいそうですよね」
と言うと、ピスタチオを出してきて、
「これと、この酒、半分ずつ呑んだら、ちょうどいいだろ。
お腹も膨れないし。
せっかくの旅なのに、ずっとお腹空かせて、窓の外見てるだけなんてつまらないだろう」
と言ってくる。
「それもそうですよね。
秋月さんとか、もう新幹線が着くまでに出来上がってそうですよね」
と笑う。
「あ、でも、コップ」
酒を分けるコップがないな、と思っていると、
「いいだろ。
これから二人で呑めば」
と海里はボトルを向け、言ってくる。
「ふ、二人でですか」
とあまりは赤くなり俯いた。
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