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海里のろくでもない日常
なんの儀式なんですか、それは
しおりを挟む夕食まで少し時間があった。
ちょっと風呂に入ってこようと海里が言うと、寺坂も付いてきた。
あまりに付いて、女性陣ももう一度入ると言う。
海里は、寺坂と素敵な庭園の見える廊下を歩きながら、此処へ来るまでのことを語っていた。
「二人で同じボトルで呑もうと言ってから、あまりが赤くなって目を合わさないから。
なんだかこっちまで気恥ずかしくなってきて。
お互い、一口呑んでは、目を見ずに、すっ、と相手のテーブルに置き。
一口呑んでは、すっ、と相手のテーブルに置き……
を繰り返していた」
と言うと、
「なんの儀式なんですか、それは」
と寺坂が苦笑いする。
「そういえば、支社長、指輪とか、あまりさんに渡されたんですか?」
「それがまだなんだ」
と海里は渋い顔をした。
「あまりの好みを訊いてから、と思ってるんだが」
と溜息をつくと、横から突然、寺坂の気配が消えた。
振り向くと、寺坂は青ざめた顔で固まっている。
「……好み、訊くべきでしたよね。
自分、渡さなきゃって、そればかりが先走って、勝手に桜田さんのイメージに合わせて買ってしまいました」
「ああ、あれ、お前の好みで買ったんだったのか。
いいじゃないか。
すごく桜田に似合ってるし。
本人、喜んでるから」
「でも……
訊くべきでしたかね?」
と寺坂は顔を近づけ、訊いてくる。
気のいい男だとはわかってはいるが、コソ泥が、
『明らかにマル暴な奴が居た』
と言ったほどのコワモテだ。
ちょっと逃げ気味に返事をしてしまう。
「いや……いいんじゃないか? 別に。
うん」
と意味もなく、肯定の言葉を並べ立ててしまった。
海里が風呂から戻ると、あまりはもう部屋に居た。
せっせとキャリーバッグの中の服をハンガーにかけている。
海里は暗くなった窓の外を見た。
あのときの露天風呂がある。
せっかくだから、お金を追加して、同じ部屋にしてもらったのだ。
「今度は一緒に入れるな、風呂」
と言うと、あまりの動きがピタリと止まる。
えーと……という顔で振り返ってきた。
「今更、嫌だとか言わないよな」
と腕を組み、脅すように見下ろすと、掛けかけていた服を手にしたまま、あまりはチラと露天風呂を見たあとで、
「一ヶ月でずいぶんと汚れた女になってしまいました……」
と呟く。
「じゃあ、お前、世の中の夫婦はみな汚れてるのか」
と言うと、
「いえ、それは結婚してらっしゃるわけですし」
と言う。
それだよ、と思っていた。
だから、俺は何度もプロポーズしてるんだが!?
と思いながら、あまりを見下ろした。
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