11 / 11
海里のろくでもない日常
プロポーズとか、結婚とか、よくわからないんですけど……
しおりを挟む「海里さん、席変わりますよ」
とまた窓側の席を譲ってくれていた海里に言うと、海里は前を見たまま、難しい顔で、いや、いい……と言う。
この人はなんで機嫌が悪いのかな? と見ていると、海里は、それに気づいたらしく、
「いや、不機嫌なんじゃない」
と言ってきた。
「この旅で、お前に言いそびれたことがある気がするからだ」
「なんですか?」
と言うと、海里は少し迷いながらも言ってきた。
「俺は、この旅で、お前にプロポーズしようと思ってた。
……秋月さん、盗み聞きはもう少し、そっとやってください」
とあまりの席の背もたれから顔を出し、聞いている秋月に海里は言う。
はいはい、と秋月はとりあえず着席したが、もちろん、聞こえてはいるだろう。
というか、この座席と座席の僅かな隙間から覗いていそうな気がして、ちょっと怖いのだが……。
だが、海里はそれを気にすることなく、言ってきた。
「なんだか毎度、プロポーズしても流されている気がするんだが……。
あまり――
今度こそ、結婚してくれ」
だが、そう言った海里は上を向いて少し考え、
「今度こそって、変だな。
そして、ひねりがないな……」
と呟いていた。
後ろから小声で、秋月が、いらないいらない、ひねりはいらない、と呟いているが、ほんと、プロポーズにひねりなどいらない。
ストレートな言葉こそ、やっぱり嬉しいものだから。
しかし、毎度、流されていると言われるのは少し心外なのだが。
お互い、年中行事のようになっていて、いつ、本当に結婚に向かって進んでいったらいいのかわからなくなっていたのは確かだが。
あまりは海里の方を見るのは少し恥ずかしかったので、前の座席の背もたれを見ながら言った。
「プロポーズとか、結婚とか、今でもよくわからないんですけど。
私はもう、貴方の居ない未来がまったく想像できないんです。
この間出会ったばかりなのに、ほんと……不思議なんですけど」
まっすぐ前を見て言うと、横の海里が、ぼそりと言ってくる。
「どうしようかな」
と。
ええっ?
此処へ来て迷うとかっ、と思って振り返ると、海里は、
「いや、そういう意味じゃない」
と難しい顔をして言う。
「どうしようかな。
お前のプロポーズの方が熱烈だ、と言いたかったんだ」
と言う。
「え、プロポーズですかね? 今の」
プロポーズだろう、と海里は笑う。
「そうですか?」
そうだ、と言いながら、そっと膝の上にあるあまりの手に海里はその手を重ねてくる。
赤くなって俯くと、後ろで秋月が言っていた。
「ほら、この二人みたいに、人前でも、しゃあしゃあと手をつなげるようにならないとー」
どうも、照れ屋の寺坂に向かって言っているようだった。
ひい、と顔を赤らめ、手を外そうとするが、外れない。
海里は暴れる自分を面白がるように、更にガッチリ握ったまま、笑ってこちらを見ていた。
秋月が身を乗り出し、寺坂たちと話し出した隙に軽くキスしてくる。
「ま、このくらい出来ないとな」
と言って、座り直した海里は笑う。
「……は、離してください」
と握ったままの手を見下ろし、あまりが言うと、
「そうだな。
じゃあ……、スペイン語で言ったら離してやろう」
そう言って、海里は機嫌良く、秋月にからかわれている寺坂たちの方を見ていた。
恥ずかしくはあるが、海里の大きな手に握られていると、なんだか安心する。
そうか。
うん。
知らなくてよかったかもな、スペイン語……とちょっと思ってしまいながら、あまりは俯き、ずっと手を握られていた。
新幹線はトンネルを通り、真っ暗になった窓に海里たちの姿が映る。
楽しげなその姿を見るあまりの顔も、照れながらも笑って、映っていた――。
完
14
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜
二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。
そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。
その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。
どうも美華には不思議な力があるようで…?
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。

あー、なつかしー!
みんな、全然変わってなーい(笑)
あれー⁉︎
草野さん、松田さんとうまくいったんじゃないんですねー?
いやいや、私は、草野さんは結局、松田さんと落ち着くんじゃないかと思っていますよ。
johndoさん、
どうなんでしょうね~(⌒▽⌒)
とりあえず、みんなハッピーエンドになるといいんですけど。
ありがとうございますっ(⌒▽⌒)/
おまけ!
早速、ありがとうございます!
更新を楽しみにお待ちしておりました。
johndoさん、
すみません(^^;
遅くなりまして。
ありがとうございます~っ(⌒▽⌒)/