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隠し神
調べてくれ
しおりを挟む那津は今の話が気になり、左衛門に話しに内所に戻ろうとしたが、その前に、眩しい往来を歩くあの大名を見てしまった。
供の者を連れてウロウロしている。
愉楽のところに逗留しているようだが、なにか様子がおかしいな、と那津は思った。
大名には愉楽の吉田屋の人間も付き従っている。
那津の視線を追うようにそちらを見て、左衛門が言う。
「景気のいいことですね」
ちょっと左衛門の機嫌が悪くなったようだった。
近くに居た咲夜を見て左衛門は言う。
「桧山のところには大名も来るが、お前のところには来ないな」
いや、咲夜はこの間正式に遊女になったばかりなんで、と那津がかばうように思ったとき、左衛門が言った。
「明野、何処からか、大名のひとりやふたり、連れてこい」
えっ?
大名を?
どうやって? 何処からっ?
と二人は左衛門を見つめるが、左衛門はただイライラしているように見えた。
今の大名のことでかと思ったが、違った。
「那津様、隠し神の正体はわかりましたかな」
さっき、七郎が隠し神の話をしていたと告げると、左衛門は無表情に言う。
「では、その岡っ引きをしょっぴいて」
岡っ引きをしょっぴいて? と咲夜と二人見る。
「行燈部屋に閉じ込めるか、拷問にかければよいではないですか」
相手は岡っ引きですよっ?
と那津は思ったが、左衛門は、
「岡っ引きなら、元罪人のようなものでしょう。
何処で始末されてもおかしくないですから、大丈夫ですよ」
と無表情だった。
さすが仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の八つを忘れたという、亡八、無表情だ。
「わかりましたよ」
と溜息をつき、那津はまだ明るい外に出て行った。
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