パクチーの王様 ~俺の弟と結婚しろと突然言われて、苦手なパクチー専門店で働いています~

菱沼あゆ

文字の大きさ
87 / 101
これは、パクチーによる暴力だ

ちょっと正気に返ってきました

しおりを挟む


 
「おはよう」

 翌朝、爽やかに圭太がやってきた。

 まるで、此処に来るのが、当然のごとく。

 開店準備をしていた芽以が、
「どうしたの?」
と問うと、

「いやいや。
 今日は会社休みだから、手伝ってやろうかと思って」
と言ってくる。

「お前、本当に休みなのか」
と小振りなフライパンを手にしたまま、腕を組んだ逸人が、厨房から覗き、言ってくる。

 圭太が、
「今日、土曜だろうが……」
と眉をひそめていた。

「クビになったんじゃないのか」
「俺がか」

「社長だって、クビになるご時世だぞ、株式会社なら」

 まだ社長にもなっていないお前なら簡単になるだろう、と逸人はまた、嫌な託宣を告げる。

 だが、
「いや、単なる息抜きだ」
と圭太は言った。

「意外とこの間、楽しかったからな。
 会社の人間じゃない人たちと話をするのも新鮮で面白いし」

 圭太がそう言う気持ちもわかる気がした。

 良くも悪くもお客さんにはいろんな人が居るからだ。

 ちなみに、芽以は、困ったお客さんに遭遇したときは、心は遠くを見つめ、謝罪を繰り返すことにしている。

「心を無にしようとしすぎて、仕事中に無我の境地におちいりそうになりました……」
と逸人に言うと、

「そういうときは俺に言え。
 厨房に居ると、ホールのことは見えないからな」
と言ってくれる。

「いえまあ、結構、彬光あきみつくんが役に立ってくれてるので」

 あの空気を読まない発言に、逆に客が引くからだ。

 本当に読んでないのか。

 それとも、読めないフリをしてかばってくれているのかは謎だが。

 すると、圭太が、
「俺はいつも会社で心を無にしているぞ」
と笑いながら、笑えないことを言ってくる。

「あんまり無理しないでね」
と芽以が心配して言うと、横から逸人が、

「そいつに、やさしい言葉などかけてやらなくていい。
 お前を捨てた男だぞ」
と言ってきた。

 いや、私が最初から貴方を好きだったとすると、この人は特に私を捨てたわけでもないんでは、と思っていると、逸人はフライパンを圭太に向かって突き出し、言い出した。

「代わりに俺が慰めてやろう。
 あまり無理するな、圭太。
 なにかあったら、俺に言ってこい」

「……男に言われても、慰められないなあ、ちっとも」
と呟く圭太に、逸人が、

「じゃあ、日向子に言ってもらえ」
と言う。

「それ、かえって、血も凍るから……」
と言いながらも、圭太は昼休憩まで手伝ってくれた。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

30日後に巨大隕石が衝突すると知らされた世界で、本当に大切なものを見つけた

てるぽに中将
SF
20××年、突然に世界中で同時に「30日後に恐竜を絶滅させた隕石よりも何倍も大きいものが衝突する予測」があり、「この隕石によって地球上のすべての人間が消滅する」との発表があった。 最初は誰もが半信半疑だった。映画の中の世界だと思った。だが、徐々に秩序を失い周りが変化していくうちに自らもその世界の変化に対応しなくてはいかなくなっていくのだった――。 読者の皆さんも「一番大切なもの」は何か? それもついでに考えていただければと思います。  ※小説家になろう にて「中将」の名前で同じ作品を投稿しています。

春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる

釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。 他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。 そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。 三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。 新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。   この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。

居酒屋で記憶をなくしてから、大学の美少女からやたらと飲みに誘われるようになった件について

古野ジョン
青春
記憶をなくすほど飲み過ぎた翌日、俺は二日酔いで慌てて駅を駆けていた。 すると、たまたまコンコースでぶつかった相手が――大学でも有名な美少女!? 「また飲みに誘ってくれれば」って……何の話だ? 俺、君と話したことも無いんだけど……? カクヨム・小説家になろう・ハーメルンにも投稿しています。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

処理中です...