同窓会に行ったら、知らない人がとなりに座っていました

菱沼あゆ

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雄嵩のブログ ~宇宙人の卵~

田中、雄嵩のブログを読んでみた

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 ある日、僕は足が痛くて、大騒ぎをしていました。

「ねえ、これ、どう思うっ?
 病院行った方がいいんじゃないかなっ?

 今はたいしたことなくても。
 実はヒビが入ってて、だんだん広がってくるとかあるかもしれないしっ」

「はいはい」
と父親も母親もスルーしたので、僕は姉に、同じセリフを繰り返しました。

 ところが姉は、シンクの中を見つめたまま、
「ふーん」
と適当な返事をしてきます。

「ねえ、姉貴っ、訊いてる?」

 僕の一大事なのにっ。

 姉っ、冷たすぎるっ。

 あさって、大事な試合があるのにっ。

 いや、近所である囲碁の大会なんだが……。

「今、あんたの心配性に付き合ってる暇ないから。
 ちょっとぶつけただけなんでしょ?

 まあ、心配性なの、私もなんだけどさ。

 ……あんたが騒いでるから言うまいと思ってたんだけど。

 実は、さっきから、見慣れぬものがシンクの中を漂っていてね。

 なんか宇宙人の卵なんじゃないかとか思って心配してたんだけど」

 僕は黙りました。

 訳のわからないことを言う奴も、より訳のわからないことを言う奴の前では、沈黙するしかないのです。

 妄想癖、上には上がいますね。
 



 そこで雄嵩のブログは終わっていた。

 このブログ、ハッシュタグはひとつだけ。

 #姉

 いや、#奇妙な姉とかにしろっ。

 あるいは、#宇宙人の卵だろっ。

 #誰か、その正体を教えてください、とかっ。

 いや、こいつらはそのとき、それがなにかを見てるんだよな。

 気になるっ。

 宇宙人の卵について考え続けて、睡眠不足で竜王戦を迎えてしまったら、どうしたらっ。
 
 田中は頭を抱えていた。


 
「ああ、この間言ってたの、あれのことだったんですか。

 それがシンクの中を、まるで、梅干しの種と果肉が水でふやかされたようなものが漂ってたんですよね」

「じゃあ、梅干しの種だろうよ……」

「でも違うかもしれないじゃないですか」

 ……なぜ、違うかもしれないと思う。

「あのとき、雄嵩、すっごい騒いでたんですけど。
 宇宙人の卵の話したら、黙りました」

「俺でも黙るな。

 頼むから、対局の前にそういう話はしないでくれ。
 ずっと考えそうだから」

「あ、じゃあ、対局の前には会わない方がいいですね」
と言われ、田中は沈黙した。



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