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王様に気に入られてしまいました
脅迫状が来ました
しおりを挟むなにも進展しないまま迎えた爽やかな休日の朝。
ユイベルグ公爵家に脅迫状がやってきた。
マレーヌが食堂で自分宛の書簡を開封していたとき、気づいたのだ。
学校からのお知らせや遠方の友人からの手紙に混ざって、それはあった。
「あら、脅迫状ですよ、お兄様」
「脅迫状?
うぬ。
誰かがお前が正妃になることを妨害しようとしているのか」
と前に座り、お茶を飲んでいた上の兄が言う。
マレーヌはその脅迫文を読み上げた。
「『王子と結婚しろ。
さもなくば、宰相を殺す』
……なんでしょう。
この方向性のおかしい脅迫文は。
こういう場合は、『王子と結婚するな』では」
下の兄が頷き言った。
「そもそも、愛の方向性がおかしいな。
『宰相を殺す』がおかしい。
お前にとって、宰相様の方が王子より大事だということ前提ではないか」
「……たぶんなのですが、差出人はお父様では」
まあ、そんな感じだな、と兄二人も認めた。
マレーヌが宰相を好きなことを知っている人間は他にもいるかもしれないが。
その中でマレーヌと王子が結婚してくれたら助かる、と思っているのは、父とこの兄二人だ。
このリアクションだと兄は知らないようなので、犯人は父しかいない。
宰相に逆らって厄介なことにならないよう、家のためにも、マレーヌと王子を結婚させようとしているのだろう。
ちなみに宰相は王子とマレーヌを結婚させたがっているが、マレーヌが自分を好きなことは知らないし。
こんな小細工をきかせよそうな人物でもなかった。
はっ、そうだわっ、とマレーヌは思いつく。
「これを宰相様にお見せしましょう」
なんでだ、という顔を二人がする。
ちなみに、姉シルヴァーナは王立図書館に出勤していていなかった。
図書館は休みではないからだ。
「脅迫されるような娘は王子の嫁にはいらんと言うかもしれないわ。
王子の身にも危険が及ぶかもしれませんものねっ。
マテオ」
とマレーヌはマテオを呼んだ。
「さりげなく宰相様に私に脅迫状が届いたことを知らせてきてっ」
「……さりげなくですか」
わかりましたよ、はいはい、とマテオは諦めたような溜息をつき、行ってしまった。
さりげなくと言われても、と思ったマテオは、さりげなさの欠片もなく、
「マレーヌ様に脅迫状が来ました」
とあっさりバッサリ、アルベルトに伝え、すぐにアルベルトがやってきた。
居間でマレーヌに脅迫状を見せられたアルベルトは渋い顔をしている。
父が誰かに書かせたらしき渾身の(?)脅迫状をテーブルに投げて言う。
「お前が王子の嫁になることで、なんらかの利益を得る一派からのものだろうかな」
ユイブルグ公爵家一派ですかね。
「……で、何故、私が殺されねばならぬのかはわからぬが」
私がお前を王子に薦めたからだろうかな、と仕事と違い、恋愛には疎い、宰相様は呟く。
「だがまあ、今回の件はともかく。
確かに。お前が妃になるということが広まれば、それを快く思わぬ連中から狙われる可能性があるな」
少し申し訳ない気もする、と言うアルベルトに、マレーヌは身を乗り出し言った。
「では、この話は破談ということで」
「破談もなにもまだ婚約もしてないだろう」
そう溜息をつき、アルベルトは立ち上がる。
「よし、さっさと婚約し、婚儀を早めよう」
ひっ。
「さすれば、正妃として堂々警備費がかけられ、警護が固められる」
では、王宮へ行って、話を詰めてこよう、とアルベルトはさっさと帰ってしまった。
パタンと扉がしまったあとで、マレーヌは、
「もう~っ。
役に立たない脅迫状なんだから~っ」
と脅迫状をまっぷたつに引き裂いた。
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