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王様に気に入られてしまいました
宰相、驚愕す
しおりを挟む力強く夢を語るアルベルトを見ながら、マレーヌは、これはもう駄目かな、と思っていた。
この方は強い信念を持って、私を王子の嫁にと思っているのだ。
宰相様の夢を叶えてあげたい。
王家を支えるのがこの方の夢で、そのために私が必要だと言うのなら。
悲しいけれど、私は王子の元に嫁ぎましょう。
そうマレーヌは悲壮な覚悟を決める。
でも、宰相様のために嫁ぐとか、エヴァン王子に失礼なので。
いつかは、ちゃんと王子を愛さなくては。
今は無理でも、いつかきっと……。
今でも王子のことは尊敬しているし。
見た目も好みでないこともない。
王子は人もいいし。
宰相様みたいに物を見るような目で冷ややかに私を見たりとか、絶対なさそうだし。
あら?
どう考えても、エヴァン王子の方が夫としていいような。
そう気づきはしたが。
人の心は何故か、いい人だから好きになる、という単純な構造をしていない。
それに、口調は突き放した感じだし、目的のためには容赦ないけど。
王家のために、おのれの人生すべてをかけて尽くそう、というこの人はやはり、尊敬できる人のような気がする。
……いや、勝手に正妃に選ばれたりとかは迷惑なんだが。
でも、いつか王子と結婚してよかったと思う日が来るかもしれない。
マレーヌの頭の中で、王子は人が良さそうな顔のまま年老いて。
王を退いた王子とガゼボで春の匂いを嗅ぎながら、孫の姿を眺め、微笑み合う……
まで妄想がいったとき、アルベルトが言った。
「マレーヌよ。
お前は私が見た中で、もっとも美しく、やさしく、愛らしい。
いつも明るく。
お前といると、人生が豊かになりそうだ。
お前と結婚する男は、この世で一番幸せな男に違いない。
そう思い、いつも見ていた」
いやあの、いつも蔑むように見られていた気がするのですが……。
この人、ただ単に、じっと見るとき、ああいう目つきになるのだろうか。
「お前はこの国で、いや、きっと、この世界で一番素晴らしい娘だ」
いやいやいやっ。
なにいつもの値踏みするような目のまま、歯の浮くようなことをおっしゃっているのですかっ、
と思ったが、アルベルトは本気のようだった。
「わ、私より素晴らしい方は他に山のようにいらっしゃると思いますがっ」
「なにを言う。
お前はこの世でもっとも美しく、面白い」
いや、面白い、いりますかね?
「ほんとうにお前は変わった娘だ。
見ていて飽きることがない」
それ、年頃の娘に言うには、あまり褒め言葉ではないかと。
「私は自分が一番良いと思っているものをなんでも王子に差し出すようにしている」
なんでもはやめてください……。
「自分が良いと思うものを渡さないようなやつは真の部下ではない」
いや真の部下でなくていいですから、と思いながら、
「お待ち下さい」
とマレーヌは言った。
「恐れながら、宰相様。
あなた様の好みが王子様の好みとは限りません」
なんとっ、とある意味純粋なアルベルトは驚く。
「人にはそれぞれ好みと言うものがございます」
そうなのかっ、とまた驚いたアルベルトだったが、なにかに気づいたように頷く。
「そういえば、私が美味いと思った菓子を王子がいまいちだと言うことがあった。
それと一緒かっ」
いや、嫁も菓子もひとくくりか……、
と思いながらも、
「とりあえず王子にもう一度確認してみましょう」
そうマレーヌは提案してみた。
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