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あやしい古民家を手に入れました
隠し部屋を見つけました
しおりを挟む「何処から聞こえるんだろうな」
と屋敷の中を歩きながら、貴弘は異音の正体を探して歩く。
すると、カリカリカリ……と実家に猫が居るのどかには、やはり、猫が爪を研ぐ音にしか聞こえない音が聞こえてきた。
「そういえば、前、友だちの家の天井裏で猫が子ども産んでたんですよね」
と天井を見上げながらのどかは言ったが、
「そうか」
と言いながら、貴弘は足許を見ている。
……この人とは気が合わないようだ、と思ったが。
耳をすませば、確かに下の方から音が聞こえてくる。
隣との境らしき箪笥がある廊下の方だ。
耳がいいのか、正確に音に向かって歩いているらしい貴弘が、その箪笥のところにたどり着く。
廊下の壁に添うように、いきなり、どん、と古い大きな箪笥があるのだ。
簡単には動かせない感じだ。
「この箪笥は何故、こんなところにあるんだ?」
と貴弘が訊いてくる。
「位置的に、隣との境をこの箪笥で塞いでるんじゃないかと思うんですが」
とのどかは言ったが、貴弘は、
「いや、おかしいだろう。
隣との境は、戸と鍵で塞いであると聞いている」
と言う。
家の持ち主が、聞いているというのもおかしな話だが。
まあ、入ったこともなかったのだろうから、仕方ない。
そんなことを考えているのどかの前で、貴弘が箪笥の後ろを覗き込み、言ってくる。
「……壁との間にかなり隙間があるな」
「風を通すためですかね?」
「細い人間なら通れそうなくらいだぞ。
こんなに開けておく必要あるか?」
「入れますかね~?」
と貴弘と一緒にその壁と箪笥の隙間を見ながら、のどかは懐疑的に呟いたが、
貴弘は、
「俺は横向きになれば通れるかな。
ちょっと入ってみよう。
お前は無理するな」
と貴弘は言ってくる。
……どういう意味ですかね。
そんなに太ってはいませんよ。
そして、胸が壁につかえることもありませんよ、ええ。
貴弘は単に無理するなという意味で言ったのかもしれないが。
この均整のとれた美しい身体の仮夫にちょっぴりコンプレックスのあるのどかはいじける。
「あ、でも、ネズミが居るかもですよ」
と今は聞こえないカリカリという音を思い出しながら、のどかは言ったが、貴弘は、
「ネズミならいいが。
人間の男が居たらどうする」
と言う。
……まあ、こっち半分は長く空き家だったみたいだから、誰か住み着いてる可能性もなくもないか、と思っている間に、貴弘はもう壁際を向いて隙間に入っていた。
ひーっ。
行動、はやっ。
空飛ぶ鳩が居たらどうするんですかっ、と動転して思ったが、鳩はもともと飛んでいた。
「社長っ。
危なくないですかっ?」
と職場に居るときのくせで呼んだが、貴弘は、
「社長はよせ。
家でまで呼ばれると疲れる」
と言う。
こんな生まれながらの社長みたいな人でもそうなのか、と思うのどかに、
「俺はプライベートと仕事は分けたいんだ。
貴弘さんと呼ぶまで、此処から出ないぞ」
とゆっくり隙間を進みながら貴弘は言ってくる。
……じゃあ、一生挟まっててください。
急に呼べるわけないではないですか、と思ったとき、貴弘が声を上げた。
「扉があるぞ!」
「えっ?
じゃあ、やっぱり、これ、扉を塞いでる箪笥なんですかね?」
「そうだとしても、こんなに隙間が空いてたら、向こうから人が出てこられるだろう。
鍵もないし。
……あ、開いた」
と貴弘の声がした。
えっ? と思った瞬間、貴弘は壁の向こう側に向かい、扉を開けていた。
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