あやかし雑草カフェ社員寮 ~社長、離婚してくださいっ!~

菱沼あゆ

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一夜一夜にヒの一夜が消えました……

さては、奴こそ、あやかしかっ?

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「それで八神さんと、雑草図鑑でネットで調べて、ヨモギで雑炊作って食べたんですよ」

 貴弘に昨日の八神とのことを聞かれたのどかは、庭先で、昨夜の夕食の話をしていた。

「……それはネットで調べなくてもできるような気がするんだが」
と言う貴弘に、

「でも、なんだか怖いじゃないですか。
 庭のもの食べるのって。

 一応、確認しながらやってみました。

 水の分量か火加減を間違ったみたいで、雑炊がねったりして、ヨモギ味なので、分量間違った餅みたいで美味しかったです」

「雑炊にしても、餅にしても、分量間違ってるんだな……。
 で、それ、何処で作ったんだ?」

「庭に八神さんちのガスコンロを持ち出して。
 いやあ、お上がりいただいてもよかったんですが。

 散らかってるので、うち」
と苦笑いして、

「……いつの間に散らかった?」
と言われる。

 この間までなにもなかったからだろう。

「アパートから残りの細かい荷物も移動しちゃいましたしね。
 片付けようと思ったら、余計散らかっちゃって」

 何故、片付けようとして散らかる……という顔をされたが、いや、こう分類して~とか分別して~とかして思いながら、床一面に物を広げてしまったのだ。

 風子が、以前、引っ越したとき、とりあえず、押入れにと思って、何個もダンボールを突っ込んだら、今もそのまま押入れをひとつ占拠している、という話をしていたからだ。

 ……何年も開けないままでオッケーなら、もうそれ、捨てていいんじゃ、と思ったのだが。

 いざ、自分がその立場になったら、きっと捨てられない。

 それで、入れる前に分類しようと思ったのだが、なかなか上手く進まなかったのだ。

「あ、そうだ、社長。
 いろいろとお世話になったので、今日、晩ご飯おごりますよ」
とのどかは言ったが、なんでだ、いい、と貴弘は言う。

「だって、雑草食ってるんだろ?」

「いやいや、回転寿司とかなら、なんか。
 実は、此処に、友だちがくれた虎の子の五千円が」
とガサゴソとスカートのポケットから、風子にもらった封筒を出してくる。

 だが、封筒を開けたのどかは、
「ぐはっ」
と漫画や小説ではよく見るが、リアルにはあまり出したことのない声を上げてしまった。

「……中身がない」

 化かされたっ。
 さては、奴こそが、キツネかあやかしだったか!
と思ったが、違った。

 土曜だが、確か仕事中の風子にメッセージを送ると、
『あっ、ほんとだっ、ごめんっ。
 あんたに渡す封筒間違えてたー』
と入ってきた。

『今度渡すねー』
という文字を無言で見つめているのどかに、貴弘が、

「……おごってやるよ、回転寿司」
と言ってきた。





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