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シンデレラはあばら屋をもらいました
それ、どんなカフェなんですかね……?
しおりを挟むで、なんだかわからないが、また貴弘と晩ご飯を食べに行くことになった。
会社近くの100均で買い物をして貴弘の仕事が終わるのを待つことにする。
で、ついでに、店の備品の下見もすることにした。
いろんな形のグラスがずらっと並んでいるのを見ながら、
100均のグラスとかも最近は結構いいのがあるなー、とのどかは思う。
シャンパングラスとか、別にシャンパンじゃなくても使ってもいいよね。
形可愛いし。
でも、みんな100均って満遍なく見て歩くから、
あ、これ、100均のって一発でわかるのが玉に瑕というか、と思いながら、店内を巡っていたとき、貴弘が店に入ってくるのが見えた。
近くでパーティグッズを見ていた女の子たちが、吸い寄せられるように貴弘を見る。
……見るよね、そりゃ。
私も見るな~、こんな人がいきなり近くにやってきたら。
いや、見ないかもな……。
ちょっと恥ずかしくて、見られないかも。
そういえば、出会ったときの記憶がないけど、どっちが話しかけたんだろうな、と思う。
私からは話しかけられない気がするけど。
呑んだら、気が大きくなったりするし、わからないなーなどと思っているうちに、貴弘が側まで来た。
のどかが居た辺りの棚を見て、
「……なにを買う気なんだ」
と言う。
ハゲヅラとか、「今日の主役」とか書かれたタスキとかがある。
「いや、店に飾るものをなにかと思って」
とのどかは言った。
貴弘が見たのが、たまたまハゲヅラとタスキだっただけで、可愛いバルーンとかも近くにあったのだ。
「これをか」
とタスキをひとつ取った貴弘がそれをのどかの胸の辺りに持ってくる。
「すんません」
と書いてあった。
何故、これを……と思いながら、のどかは無言で、タスキをひとつつかみ、貴弘の胸に当ててやった。
「雑用係」
「誰がだ……」
とひと揉めしたところで店を出た。
100均を出たあと、
「今日こそ、ご飯おごりますよ~」
と荷物を家に一度置きに帰りながらのどかは言ったが、
「金はあるのか」
と貴弘に冷静に言われる。
「……ツケでお願いします。
私がおごるので、給料日までツケておいてください」
「意味がわからないが……」
「え~と、じゃあ、出世払いで」
「いつ出世するんだ?」
とあばら屋を見上げ、貴弘は言ってくるが。
いや、それ、貴方の持ち家ですからね……とのどかは思っていた。
「あ、そうだ。
社食ならおごれますよっ。
給料払いなので。
うちは社員以外の人も食べられますし。
社長なんて、取引先の人ですし、ますます問題ないですっ」
「なんで俺がお前んところの社食で食べなきゃならないんだ」
「そう言えば、社長のところは、社食ないんですよね?」
いや、それなんだが……と貴弘は渋い顔で言ってくる。
「会社から結構近いし。
此処まで歩かせて、少し従業員を運動させるのにもいいから、此処を社員寮の食堂兼社食にしてもいいんだが。
……此処がまともな店なら」
と貴弘はいらぬ一言を付け加える。
「っていうか、そもそも、お前は料理ができるのか?」
「えっ?
やだな~。
できますよ~。
八神さんに作って差し上げたじゃないですか、雑炊」
「だから、雑炊だろ?」
「雑炊屋さんってのも近頃、流行ってるんですよ」
「……雑炊屋なのか? 此処。
っていうか、お前、夫の俺にご飯作ったことないのに、よその男に先に作ってるの、おかしいだろう」
と言われたので、
「だったら、社長も食べにくればいいじゃないですか、この社食兼カフェに」
とのどかは、あばら屋を指差したが、そういえば、この人、一緒に住むとか言ってたな、と思い出す。
「雑炊ばかりじゃ腹減るだろうが」
「違うメニューも考えますよ。
そうだ。
身体にやさしいメニューとか」
と言うと、ああ、それはいいな、と日頃から無理してそうな貴弘は頷いた。
「仕事がはかどるよう集中力がアップするようなメニューとか」
「なるほど」
「リラックスできて、情緒が安定するようなメニューとか」
「いや、それはまず、お前が食べろ」
と貴弘が言ったとき、
「そうだ。
私が作ってやろうか?」
と声がした。
猫耳神主が庭に立っている。
なにか自信ありげだが、貴弘は胡散臭そうに訊いてくる。
「いや、霊が作ったものとか大丈夫なのか?」
「食べたものが、かき消えるかもしれませんね」
「どんなカフェだ……」
「でも、ダイエットになりますよね」
「腹減るだろうが、仕事中」
と貴弘は渋い顔をして、やる気満々な猫耳神主を見た。
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