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いっしょに住めと言われました……
猫じゃらしって、食べられるらしいですよ
しおりを挟む「さっき、偶然、成瀬社長に会ったので、言っときましたよ、工期の話」
家に帰り、猫と化した泰親と庭で遊んでいた、のどかの許に飯塚からそんな電話がかかってきた。
「あ、ありがとうございます」
のどかが、ねこじゃらしで遊んでくれなくなったので、泰親は人に戻り、縁側に腰かけて、お茶をすすり始める。
「先程は、お友だちがたくさんいらっしゃったので、事情を知らない方もいらっしゃるかと思って言わなかったんですが。
のどかさんは、成瀬社長の許にお住まいになられるでしょうから、大丈夫でしょうが。
問題は八神さんですよね。
何処かアテがあるのかどうか、ちょっと訊いてみていただけますか?」
私、八神さんの番号は知らないので、と飯塚が言う。
あ、はい、と言うと、飯塚は、もし、ないようだったら、手配するので言ってくださいと言って、電話を切った。
『のどかさんは、成瀬社長の許にお住まいになられるでしょうから、大丈夫でしょうが』
という飯塚の言葉を思い出しながら、
……いやいや、なにも大丈夫ではありませんよ、飯塚さん、とのどかは思っていた。
酔って、みんなで此処で雑魚寝するとかとは訳が違うし、社員寮に住むのとも違う。
第一、私なんかが行ったらお邪魔だろうしなーと思いながら、ふと見ると、お茶を飲んで、ふう、と息を吐きながら、庭を眺めている泰親の耳が横に寝ていた。
「さては、リラックスしてますね、泰親さん」
とのどかが笑うと、
「いやいや、これは今、『満足』な感じの猫耳だ」
とおのれの頭の上の耳を指差し、泰親は言う。
……難しいな、猫耳。
なにも感情読み取りやすくない、と思いながら、自分も座ってお茶を飲もうとして、縁側に置かれた猫じゃらしを見る。
「そういえば、猫じゃらしって、食べられるらしいですよ」
六月が近づき、ようやく穂の部分が育ってきた猫じゃらしを見て、のどかは言った。
「ほう」
「この形、穀物っぽいなと思ったら、やっぱり、イネ科みたいなんで。
粟の原種らしいですよ。
秋になって、実ったら、ちょっと食べてみましょうか。
メニューに加えられるかもしれないし。
煎ると、ポップコーンっぽい味になるそうですよ」
猫じゃらしの本当の名前は、エノコログサ。
犬のシッポっぽいふさふさのせいで、イヌコログサ、と言われていたのが、エノコログサになったそうだ。
でも、犬より、猫の方が喜んでいるようだが……と思いながら、泰親を見て言った。
「泰親さんの時代に食べたりはしてなかったんですか?」
「さあ、私は食べなかったが」
と言いながら、泰親は猫じゃらしの穂先を何度も指で弾いて遊んでいた。
……人間の状態でも楽しいんだな、猫じゃらし。
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