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いっしょに住めと言われました……
……こんな感じの状態で、我々の婚姻届は出されたんだな
しおりを挟む「そんなに払いたければ、年金で払え」
「ね、年金でですか?」
少なそうな年金で払うには、それこそ、お金を貯めとかないとなんですけど。
っていうか、何十年も経って会いに行って、
「これは、あのとき奢っていただいて、泊まらせていただいた分の代金なんですが……」
とか言って持っていっても、おそらく、
「なんだそれは」
と言われると思うんですが。
っていうか、それ以前に、
「誰だ、お前は」
と言われるのでは。
そんな未来を想像し、ちょっとしょんぼりしてしまう。
せめて、年賀状で住所だけは知らせてもらっておかないと、と思っていると、貴弘がちょっと笑って言ってきた。
「じゃあ……、今すぐお前で払ったらどうだ?」
「え」
少しの間を置き、貴弘がまた言った。
「今すぐお前で払ったらどうだ?」
えーと……と思いながら、沈黙していると、もう一度、貴弘が言う。
「今すぐお前で払ったらどうだ?」
だんだん棒読みになってきたぞ、最初は機嫌が良かったのに、と思いながらのどかは訊いてみた。
「あのー、……どうやってですか?」
「……どうやってって。
……俺が知るかーっ」
と自分で話を振っておいて、貴弘はキレ始める。
呪われた猫耳の神主は、ワインをぐびぐび行きながら、
「のどかは鈍いなー。
貴弘が酔った勢いで上手く言ったのになー」
と言って、笑っていた。
「……何度も繰り返し言わされているうちに、正気に戻ってきたけどな」
と貴弘が呟いていたが、いや、こちらも酔っているので、上手く耳に入ってこないのだ。
そして、酔った頭には理解力もない。
……こんな感じの状態で、我々の婚姻届は出されたんだな、と気がついた。
そのとき、店の従業員が続きの料理を運んできた。
ちょっと心配そうにのどかの横の泰親の席を見ている。
来るたびに、その席に人間が居ないのに、料理だけ減っていっているからだろう。
最初は、
「あ、そこの人、ちょっとお腹を壊してて」
と言い訳していたのだが。
だんだん、彼は、お腹を壊した人間に、こんな濃厚な料理出して大丈夫なのか? という顔をし始めた。
それで、
「仕事の電話が何度も入って」
とのどかは言い訳を変えてみた。
そういう頭は働くのだが。
社長の言ってることは、何故か頭に入ってこないんだよな~、と思う。
チラ、と目の前に座る貴弘を見ると、ちょっと不機嫌そうに、こちらを見ている。
な、なにかご無礼しましたかね、私……と思い、怯えた。
そんなこんなで、そのあとも、貴弘がなにか言っていても、やっぱり、耳にも頭にも入ってこなかった。
……温かいランプの灯りで見る社長の黒い瞳がすごく綺麗だったから、ぼんやりして。
とかいうわけでは、決してない。
いや、本当に……。
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