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警察に通報されました
儚げなイケメンが現れました
しおりを挟む「よく考えたら、今まで通報されなかったのが不思議だよな」
「みんな驚いて走り去って、そのままでしたからね」
などと話しながら、三人は派出所に向かっていた。
すると、途中通った呑み屋付近で、綾太と中原に出会ってしまう。
「なにしてんだ、お前ら、デートかっ」
と言う綾太に、中原が、
「三人でデートしないでしょう」
と言って、
「もうひとり何処に居るんだっ」
と揉め始める。
そうか、綾太は、泰親さん、猫にならないと見えないんだよな。
まあ、猫になったら、迷惑なほど、綾太に溺愛されるんで。
泰親さん、今は猫にならないだろうけど……。
「何処にいるんだっ、もうひとりっ。
お前たちがデート中でないという証拠を出せっ」
と騒ぐ綾太が付いてきたので、お目付役の中原も溜息をつきながら、派出所まで付いてきた。
今は閉まっているおもちゃ屋側の派出所に到着すると、青ざめたスーツ姿のイケメンがパイプ椅子に腰掛け、沈黙していた。
その向かいに座っていた若いお巡りさんがこちらを見る。
それぞれが自己紹介した。
「成瀬貴弘です」
「……一応、その妻です」
「こいつを成瀬の妻というのは嫌だが、その妻の幼なじみです」
「その幼なじみの秘書です」
「なんで集団で来るんですか……。
っていうか、妻の幼なじみの秘書ってなんなんですか」
とその若い警官が困った顔をしたとき、
「で、俺がその妻の隣の家のものだ」
という声が後ろでした。
振り向くと、相変わらず、
よくそこまでスーツ、着崩せますねっ?
と感心してしまう出で立ちの八神が立っていた。
「八神さんじゃないですかっ」
と警官が声を上げる。
「いや、うちの隣の家に人が連れ込まれたと通報があったと聞いてな」
すでに、何処からが隣か、線引き難しくなってる感じですけどね、と苦笑いするのどかの前に出て、八神が警官に詳しい話を聞いてくれた。
のどかは彼らの会話を聞きながら、ふと、項垂れている青白い肌をしたイケメンの足許を見る。
「靴置いておいたのに」
とのどかは呟いた。
男が靴下のままだったからだ。
のどかの呟きに男が顔を上げる。
目が合った。
……なんか無駄に綺麗な目をしてるな、とのどかは思う。
その目のせいで、余計物悲しげな顔に見えている気もするが。
風子が見たら、
「しゃんとせいっ!」
と背中をはたきそうな儚げなイケメン顔だ。
「靴、なくなっちゃったんですね。
すみません」
いや、私がとって逃げたわけじゃないんだが、と思いながらも、なんとなくのどかが謝ると、男は、
「いや……別にいいです。
どうせ、あの靴、履いて、何処かに行くわけでもないので」
とテンション低く言ってくる。
そのとき、警官の手許にあるメモ書きを見ていた貴弘が、ん? という顔をした。
「青田陸月。
……変わった名前だが。
お前、もしかして、うちの社員の青田か?」
するとそのイケメンが貴弘を見て言う。
「……成瀬さん。
もしかして、うちの社長さんですか?」
もしかして、うちの社長って、なんだ……。
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