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いつもより多めに懐いています
今のところ、イケメンが降ってくるだけなんで
しおりを挟むのどかは、夜、帰ってきた貴弘にも縁側で、タンポポコーヒーをご馳走してみた。
「うん。
飲めないことはない」
……どうも、この人たちにはウケが悪いな。
「まだまだ改良の余地ありそうですね」
「いよいよ開店が近づいてきたってのに、そんなこと言ってていいのか」
と貴弘がごもっともなことを言ってくる。
「ばっちり営業許可ももらっちゃいましたしね~。
庭がまだ雑草まみれなんで、こんなところでやるんですかと言われちゃいましたけどね」
ははは、とのどかは笑う。
「まあ、あとは食器をそろえて、メニューを決めて、家具をどうにかして、庭を鬱蒼としない程度に綺麗にするだけですかね?」
「……あとが多すぎだろ」
と言ったあとで、貴弘はタンポポコーヒーを一口飲んだ。
「あ、いまいちなら、飲まなくていいですよ」
と言ったのだが、貴弘は、
「いや、お前が頑張って作ったんだから飲むさ」
と言って、見つめてくる。
……なんでしょうね。
この間から、まるで普通の恋人同士のようなのですが、と思いながら、のどかはジリジリお尻の位置をずらしながら、貴弘から距離を取ってみた。
「そういえば、あの呪いの部屋は閉じたままにするんだよな」
とそのことに気づいているのかいないのかわからない貴弘が訊いてくる。
「そうですねー。
お客様が入り込まれて、なにかあったら困りますしね」
まあ、今のところ、イケメンが降ってくるだけで、逆パターンはないので、あそこに入ったからと言って、何処かに吹っ飛んでったりはないと思うのだが。
「今まで見ないふりして、呪いの部屋とは、なあなあでやってきましたが。
カフェもオープンすることですし。
いよいよ、呪いを解くときかな、と思ったんです。
でも……。
でも、私、もう泰親さんとは離れられません」
と草むらを見つめ、のどかが言うと、ぼとりと貴弘はカップを草の上に落とした。
「泰親さんの居ない生活は考えられないんです」
強張った顔で貴弘がこちらを見て、訊いてきた。
「……俺は?」
は? とのどかが言ったとき、ちょうど、泰親猫が草むらの暗がりから出てきた。
淡いブルーとグレーの混ざった丸い瞳で、二人を見つめて、な~と鳴く。
二人は一瞬、止まったあとで、立ち上がると、奪い合うように泰親を抱っこし合った。
「そうだな、確かに考えられないなっ」
と貴弘が言う。
「ですよね、社長っ」
と二人で仲良く泰親を可愛がる。
縁側を通った八神が、
「……ラブラブすぎて鬱陶しいカップルだな~」
と呟いていた。
その頃、中原は夜道をウロウロしていた。
何処を歩いていて、あのあばら屋敷にワープしたんだったかな、と思いながら。
夜はまだ冷えるので、なんだか風邪をひきそうだったが、そのポイントを探して、あの日の記憶を頼りに歩き回っていた。
理由をつけてのどかのところに行くのは嫌なので。
呪いで自然に飛びたいな、と思ったわけでは決してない。
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